※女体化注意
『ノボリがパニックなう!早く来て!(^▽^)』 緊急なのかそうじゃないのかよくわからないメールがクダリさんから届いて、それでも恋人の万が一を考えて最短記録で二人の住むマンションに駆けつけた私が目にしたのは、信じられない光景だった。 「ど…どうしてそうなった……」 「あはは!僕らにもわかんなーい!」 「クダリッ!なぜナマエ様を呼んだのです……!!」 真っ青な私、ケラケラ笑うクダリさん、そして真っ赤なノボリさん。 信じられない。と言うか、信じたくない。 けれど私の目に違和感を覚えさせる『ソレ』はあまりにも存在感がありすぎた。 ――特に、クダリさんのソレが。 「朝起きたらね、こうなってた!」 たゆん。 そんな効果音をつけて、クダリさんのものすごく大きな胸が揺れる。 そう――胸。おっぱい。 男性であるはずの彼ら双子は持ち得ないはずの、二つの胸の膨らみが、シャツのボタンを弾き飛ばさんばかりに物凄い自己主張していらっしゃる。 「バカな。ありえない」 「えー?でも実際目が覚めたらこうなってたんだもん。触って確かめる?」 「ひぇ?や、ちょっ……!」 ふにゅん。 クダリさんに強引に両手を掴まれて、何でもできる証に導かれた。 何これすっごい柔らかい。指が埋まりそう。それにあったかいし、ふかふかだ…!(うあああああ!!) 「あっ、あ…!やん!ナマエったら上手ぅ……!」 あんまり心地いい触り心地なものだからつい無言になってふにふにむにゅむにゅしていると、クダリさんがノリノリでいかがわしい声を上げだした。 いつもならすかさずツッコミを入れるとこだけど、生憎今の私はおっぱい星人。もうクダリさんのメロメロボディに夢中である。 そんな私の背後からにゅっと伸びてきた腕が私の手首を掴んでクダリさんの胸から引き剥がした(ああ!) 言うまでもない。 犯人はノボリさんだ。 「――ナマエ様、お話がございます」 「ッ……!!!」 咄嗟に恨めしげな視線を投げかけてしまったのが余計に癇に障ったらしい。 ゆっくりと目を細めたノボリさんが、珍しくにっこり笑う。 だと言うのに、その笑顔には制帽も被っていないのに影が落ちていて――要するに、ひどくお冠なわけだ。 「のっ、ノボリさ……!」 「ここでは障りがございますので、ぜひわたくしの部屋に」 言って、有無を言わさず小脇に抱えられ、なす術もなくノボリさんの部屋に連行されていく私に、ソファのクダリさんはニヤニヤと笑いながら『頑張ってー!』とのんきな声援を送っていた。 ・ ・ ・ 「えぇっと、それでお話って言うのは……」 ノボリさんの部屋についてやっと床に降ろしてもらえたのは良いんだけど、なんでノボリさん今鍵閉めたんだろう。 静かな部屋に響いた施錠の音にビクビクしながら後ろを振り向けば、ギロリと鋭い目に睨まれて、怯んだ足が思わず一歩逃げてしまう。 そうすると、ノボリさんはズンズンとこっちに近づいて、離したはずの距離はほぼゼロまで埋められてしまった。 「ッ、ノボリさ…!」 「……ぜ、でございますか」 「――へ?」 声が小さすぎて、この距離なのにきちんと聞き取れない。 思わず聞き返すと、ノボリさんはカッと目を見開いて私の両肩を強く掴んだ(ひ、ええ?!!) 「ッなぜ!クダリにばかり構うのです!!」 「 ぅ、え?」 「誠に遺憾ながら胸が膨らんだのはわたくしも同じッ!でしたら!!普通は恋人であるわたくしの胸を揉むべきではございませんか?!」 「えっ…ええー?」 思わず半笑いになってしまう私を許して頂きたい。 いやだって、ノボリさんずっとソファで縮こまって恥ずかしそうにしてたし。 そもそも私が進んでクダリさんの胸揉んでたわけじゃないし(いや、途中から夢中だったのは否めないけど) 「わたくしの胸がッ…クダリよりも、小さいからですか……!!」 「ノボリさん、お、落ちついて…!」 「これが落ちついてなどいられますか!!」 「いやだって……ノボリさん、揉まれたいんですか?」 「ッッ??!」 ボッ!と、まるで火がついたかのようにノボリさんの白い頬が一瞬で赤くなる。 先程までの勢いはどこに行ってしまったのか、途端に「え? あ ぅ」と口ごもる姿を見る限り、本気で自分が何を言っているのか自覚がなかったらしい。 そんな風に、滅多に見られないくらい動揺したノボリさんの姿に悪戯心が刺激され、思い切って手を伸ばしてみた。 「えいっ!」 「ひ、ぁ?!まっ、お待ちくださいましナマエ様…ッぁ!」 ぷにぷに、ノボリさんのおっぱいが私の手の中で弾んで震える。 ううん…確かにクダリさんよりは小さい。クダリさんがFくらいだとすると、ノボリさんはDくらいだろうか。 いやそれでも本物の女子であり恋人である私より大きいとか……納得いかない。 「んッ、や…!やめッ、おやめ、くださいまし…ぃ…!」 私の掌では余るくらいのノボリさんのおっぱいは、クダリさんのあの柔らかさとはまた別のハリがあって、これまた触り心地抜群ときた。 懲りずに夢中になって、下から持ち上げるようにぷるぷる揺らしてみればノボリさんから切なげな声が上がる。 自分の胸じゃこうはいかないっていうのが悲しいところだ。 苛立ち紛れにシャツの下でピンと立ち上がっていた胸の先端を爪の先で軽く引っかくように掠めてやればノボリさんが一瞬ビクリと肩を跳ねさせて、へにゃりとその場に腰を落とした。 「っ、ナマエ、様…!ぃ、いい加減に……!」 「えぇ?だって、揉めって言ったのはノボリさんじゃないですか」 「!!そ、その様なこと…ぁ、っン!」 あーあーもう真っ赤になっちゃって説得力とか皆無です、ノボリさん。 座り込んだノボリさんに合わせて私も床に膝をつき、尚もノボリさんの胸を弄り倒す。普段散々泣かされてる仕返しだ。 それになんか……震えながら一生懸命声を抑えようとしてるノボリさんって、すごくヤラシイ。 もっともっと、意地悪したくなる。 調子に乗った私は小さく喉を鳴らしながら、片手をするりとノボリさんの下腹部に滑らせた。 「――ね、ノボリさん……コッチは、どうなってるんですか…?」 「!!!そ、こは……!」 実はずっと気になってた。 何が原因なのかはわからないけど、ノボリさんもクダリさんもいつもより一回りくらい身長が低くなってたし、心なしか声も高い。 と言うことは、二人の身体に起こった変化は胸だけではないわけで――つまり、それは。 好奇心に突き動かされるまま、ドキドキしながらノボリさんのベルトに手をかける。 ――その手を、ノボリさんがガッチリと強い力で掴んだ(あ、れ デジャビュ?) 「――ナマエ様」 ゆっくり、まるでスローモーションのように、身体が後ろに倒れる。 ノボリさんの向こうに、天井。 あれ……? 息を呑んで、引き攣った笑みを浮かべる私に返されたのは本日二度目のにっこり笑顔だった。 「の ノ、ボリさん、えと…か、顔が、恐いです…っ」 「生まれつきでございます」 「――ぃ、ひきゃあ?!!」 いいや違う私の知ってるノボリさんはマジギレしてるときしかそんな顔しないもん!! そう言い返そうとした私を遮るように、ノボリさんの手がシャツの中に入り込んできて背中が浮いた。 「〜〜〜っご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃ!!調子に乗りすぎました反省してます!!!」 「おや、今更でございますね」 『だから止しなさいと言ったのに』 これ見よがしなため息と共にそう言ってやれやれと軽く首を振るノボリさんの長い指が、ブラジャーの中に潜る。 手馴れたその手はさっきの私なんかとは比べ物にならないくらいにいやらしく動いて、息を弾ませながら強く目を閉じれば頭上でノボリさんがクスリと笑ったのが聞こえた。 「――女性の身体だからと、油断しましたか?」 ああ、もう、逃げられない。 男のノボリさんにも、女のノボリさんにも、結局私は敵わない。 その事実を嫌と言うほど身体に教え込まれて、泣き腫らした私はノボリさんの柔らかい胸の中で目を閉じた。 ・ ・ ・ 「――ッ、ハ……!!」 カーテンの隙間から白い朝日が差し込んでいた。 いつも通りの、私の部屋。ベッドの上。 一瞬何がどうなったのか理解できなくて、パチパチと目を瞬かせれば、枕元でライブキャスターがメールの着信音を鳴らしている。 もちろん、ベッドには私一人で、そこに女体化したノボリさんの姿はなかった。 「ぁ……――」 なんだ、夢か。 唐突に理解して、詰めていた息をふぅっと吐き出す。 そうだ。いきなりノボリさんとクダリさんが女体化するなんて、そんなバカな話があるわけない。 本当に夢でよかった。 「ん………ん?」 それにしても変な夢だった。 そう思いながら手に取ったライブキャスターのボタンを押して、新着メールを開く。 差出人はクダリさんだ。こんな朝早くから一体どうしたんだろう。 『ノボリがパニックなう!早く来て!(^▽^)』 …………バカな。 (12.02.10)
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