捧げもの | ナノ
※美咲さまリク!
初めて君に会ったとき、俺は直感した。
“強い”
感情を露しないその冷酷な表情。何もうつしていないガラスのような瞳。俺は一瞬にして彼女から目を離せなくなった。
血まみれの、君は
(俺の強さのアカシ)
阿伏兎に後で聞いたところ、彼女はどうやら夜兎らしい。あんまり人に関心を持たない俺が、初めて関心を持った夜兎。
「名前はなまえ。かなり強いって噂だぞ」
と、阿伏兎は言ってたけど、俺のほうが強いに決まってる。
「あ、こんにちは。」
「……」
廊下を歩いていると、誰かに声を掛けられた。
今、はなしけないでくれ…………ん!!?
「君、なまえ?」
長い、黒髪に、黄色の髪留め。
まちがいなく、彼女だ。
「はい?どうして私の名前…」
「よかった!」
俺は持っていた傘で、彼女の頭へ向かって投げつけた。彼女はびっくりしていたが、なんともないような顔でかわす。
うん。瞬発力は合格だ
「俺は神威。」
「え………、あぁ、あなたが神威!」
彼女は何か閃いたような顔で俺に握手を求めた。
そして、ニッコリと笑った。
「よろしくお願いします、団長さん?」
彼女は第七師団員に数日前になったばかりだった。彼女、なまえは戦いのとき以外は普通の女だった。
友達と話して、
笑って、
時々悲しむ
けれど、戦いのときは、あのときのような、冷酷な瞳になる。俺は、そんな彼女とたくさん話した。別にそこに変な感情はない。ただ、彼女を殺せればよかった。それまでの暇つぶし。
「――私、右目が見えないんです」
なまえが突然、そんなことをいった。
「何故だい?」
そう聞くと、なまえはニコリ、と笑い左目を閉じて、俺の顔を確かめるように触った。
「昔、油断して、しくじったんです。右目に敵の銃弾が――」
いいことを聞いた。
俺からすれば敵の弱点を狙うなんてこと、したくないけれどしょうがない。なまえはそうしなければ殺せないんだから
「――だから」
ズブッ
「―――え、……っ、う」
俺は彼女の心臓に手を当てておした。俺の腕が、彼女の体を貫通している。
「“僕に殺されたい”って?」
「ちがっ……っ、」
彼女の頭がガクン、と下がる。俺は手を彼女の体から抜くと、彼女の目をゆっくりと閉じさせた。
「―――嫌なんだ」
本当は知ってた、彼女が自分に好意をよせてたことは。
本当は知ってた、俺が彼女に好意をよせていたことは。
でも、
俺は、
守るものが増える度に弱くなっていく。
「――だから。」
だから全て捨てた。
妹も、母も、父も、全て。
強さだけを求めてきたんだ。
そんな俺が彼女に言えることは一つだけ。
「ごめん」
君の好意には応えられないよ。