小説 | ナノ







「星、見に行こう」




彼女は夜が好きだ。
……というより、真っ暗な空に輝いている星が好きだ。
僕は星なんて、と思っていたけど、星を見る彼女は好きだった。

「あ!ねぇ、アレがオリオン座だ!」

彼女は星を見るとき、いつも星座の本を見て、どれがどの星か、必ず確かめる。
実際、僕にはどれかそうなのか分からないが「そうだね。」と相槌をうつ。
夜空を見ていると、目の前を流れていく星がはっきりと見えた。流れ星だ。



「ヒロト!見た!?」


興奮ぎみに話しかける彼女。本当に楽しそうだ。僕も楽しいよ


「願い事しなきゃ」



そういって、彼女は目を瞑り手を合わせた。
必死に願う彼女を見て「流れているときにしかダメなんだよ」とは言えなかった。
僕も彼女の真似をして願い事をした。…叶う事はないと分かっていたけれど。
ちらり、と彼女のほうを見るとまだ祈ってる。
そんなになにを祈ってるんだろう…。



「なまえ?そんなに何祈ってるの?」
「秘密だよ!…ヒロトは?」
「僕も秘密」
「えぇー!教えてよぉ」



彼女が僕の背中をバシバシと叩く。

そんなことしても痛くないよ。

そのうち、叩くのをやめてそっぽを向いた。
これはきっとすねているんだろう。



「ほら、拗ねないで」



彼女をこっちに引き寄せ、頭を撫でる。
頬を膨らませている彼女はリスに似ている。あぁ、リスって何をすれば喜ぶんだっけ
暫くそうしていると、俯いていた顔をあげる。……機嫌直ったかな


「――…私は、」
「ん?」
「……私は、またヒロトと一緒に夜空をみたいなって………」



少し頬を赤らめて、照れくさそうに言う彼女がとても愛しく思えた。
僕は彼女を強く抱きしめた。そうか、君はこんなに小さい存在だったのか
彼女を壊さないように大事に抱きしめる。あぁ、僕の宝物。絶対に離したりなんてしてやらないよ



「ねぇ、なまえ」
「ん?何、ヒロト」
「僕の願い事教えてあげようか?」
「うん!」



目の前で彼女の髪が揺れる。柔らかいその髪を右手で触り、左手を彼女の頬に添える。
 そして、彼女の耳元に顔を近づける。



「僕の願いは――――」











「君がずっと、僕の傍で笑ってくれることだよ」