小説 | ナノ





「あのね、豪炎寺くん。」
「何だ?」
「赤点とっちゃった。」
「はぁ?」

えへへ、と×がたくさんついた答案用紙を俺に見せてくる。じゅ、18点だと!?

「みょうじ……お前、それ……」
「あはは、授業中寝てたらこんな点数とっちゃった!」
「自業自得だろ」

俺の人生において、こんな点数をとるやつなんて一人も………いや、大勢いた。
18点のテストをなぜか嬉しそうに見せてくるみょうじにため息をついて、テスト用紙を奪い取った。惜しいミスばかりだ。これなら、追試を受ければ簡単に赤点から脱出できるだろう。
それにしてもこのテスト、平均点は80だったような…。
見せてもらった18点のテスト用紙をみょうじに返す。

「で?」
「…え?」
「……俺に勉強を教えてもらいたいんじゃないのか?」
「えー!?なんでわかったの?もしかして豪炎寺くんてエスパー!?」
「………。」
「ゴメンナサイ」

冷ややかな目でみょうじを見ると、素直に謝ってきた。
というか、教科書とノートを持ってきたらそんなのすぐにわかるだろ。

「で、どこが分からないんだ?」

みょうじから教科書とノートをもらい、ペラペラとページをめくる。ところどころに付箋がついている。意外と勉強家なのか?
テスト用紙とノートを見比べて、間違いが多い範囲を調べる。…どうやらみょうじはまんべんなくどこの範囲も苦手にしているようだ。

「ここなんだけど…」

みょうじが指差したところは、正解率がもっとも低かったところだ。わからなかったのも無理はない。


「ここはな、……」




***




三十分後。

最初は真剣に聞いていたみょうじから相槌がない、と思っていたら器用に寝ていた。
寝るのだけは、高得点だ。
もし”睡眠”という科目があったのなら必ず百点をとるだろう

「ん…?」

みょうじが寝て、どうするかと考えているとみょうじの持ったいたシャーペンが何かを書く途中で止まっているのが見えた。
何を書く気だったか気になって、ノートを起こさないようにみょうじから取る。


「……あぁ、俺もだ」


その文字を見て、そうつぶやいた。
そしてその下に俺の字で返事を書く。




寝ている彼女が妙にかわいく見えた。





一冊のノート
(豪炎寺くんが好きです)