『ん、ぅ…』
目を覚ました。
どのくらい気を失っていたのだろうか
まだ、頭がガンガンする
…クソッ
「やっと起きた?」
ガタン、という椅子が動く音がしたと思ったらエリザベスを誘拐した犯人が俺に向かって言った。
『誰だ』
犯人の顔を見てみるが、一切見たことがない。
何故、エリザベスを誘拐したんだ?誘拐する理由なんてないだろうに
「…僕は君を知っているのに」
『誰だ』
お前が俺を知っていようが関係ない。
エリザベスに恐い思いをさせた報いは必ず受けてもらう
「…君の大事な妹は心配じゃないのかな?」
ピク、と体が動いた。
『……なんだと』
「だから君の妹…エリザベスだったっけ」
思い返せば俺の近くにいたエリザベスは居ない。
『エリザベスは何処だ』
男はフ、と笑った。
「知りたい?」
『早く教えろ、お前には用がない』
俺は男を鋭く睨んだ。
男は楽しいそうにまだ笑っている。
「……あの子も可哀想だよなぁ姉のせいであんな思いをすることになるなんて」
一体こいつは何を言おうとしているのか
ズキン
頭が痛くなる。
[親がいない子、か]
ズキン、ズキン
「あの時君が…」
『黙れ!!』
[なんと哀れな子だ]
嫌だ。嫌だよ。
思い出したくない。
昔の事は…
カコヲヨミガエラセタクナイ
「フ、アハハハハハッ」
男は大声をあげて笑う。
「俺はお前のことを忘れない、復讐を終えるまではな」
男は名前を睨みながら言った。
先ほどの口調とは違い、男は本性を見せ始めたようだ。
『復讐だと?』
怨まれることなんて俺はしていないのに、一体復讐とはなんだ
「……俺はただお前が苦しめばいいんだ、まぁお前は忘れているみたいだがな」
男は顔を歪ませ、俺から受けたなにかを思い出しているようだ。
『何故エリザベスを誘拐したんだ、どうして関係ないものを巻き込んだ!!』
「あの子は君の妹だからだよ」
男はニコリ、と"それが何か?"と言った様子で笑った。
『お前は何も分かっていない、俺は……』
「五月蝿い!!」
男が突然叫んだ。
「口が過ぎたようだ……名前、君には死んでもらう」
そういって男は銃をポケットから取り出し、俺の額に銃口を向けた。
――やられる
そう思って目を瞑った瞬間バァン、という音が聞こえた。
しかし何も起こらないので目を開くとそこには――
「大丈夫か?名前」
――シエルがいた。