「姉さ、んた…助けて!」


一瞬呼吸をするのを忘れていた。



***



『シエル!チェスやろーぜ!』


仕事が落ち着いたので、何故か急にチェスがしたくなった。


「チェスできるのか?」


馬鹿にしたなこのヤロウ!


『馬鹿にしないでもらいたい、てかするな』


「強いんだからな、本当に強いんだからな」といっているが本当に強いのか分からない…
だって目が泳いでいるから。


「まぁ、どっちでもいいがな」


彼なりのフォローなのだろう「たとえ弱くてもいい」という。

チェスも終盤に近づいた時ふと、思い出したように名前が口を開いた。


『エリザベス、明日くるんだよな』
「…あぁ」


明日はエリザベスが遊びに来る事になっている。
俺もここにいると妹が恋しくなってくる。

…はやく来ねぇかな


「…チェックメイト」
『なぬっ』


…負けた。悔しい


「お坊ちゃん、絵画の時間です」


もう時間になってしまったのかセバスチャンがやってきた。


「今、行くまた後でな」
『おう』


「また後で」と約束をし、シエルは部屋を出て行った。
1人になった俺は暇で暇でしょうがなかった。


『エリザベスがいたらこんな事はなったのに』


…反対に騒がしかったな

ここに来る前のことを思い出すと少し楽しくなった。


「お嬢様、何をしているんですか」


高級な椅子に座って窓の外の景色を見ていた俺を見て「そんなに暇なんですか」と羨ましそうに執事の名前は言った。


『暇で悪いのか?』
「いいえ、そんな事はありませんよ」


執事の名前は人を馬鹿にしているのかフッ、と笑っていた。


「お嬢様、明日エリザベス様が来ますね」
『そうだな…楽しみだ』


ニコニコと笑う名前とは反対に執事の名前の表情は曇っていた。


「悪い予感がしませんか?」


悪い予感?


『そんなものしないけど』
「そうですか、それならいいんですけど」


「考えすぎですかね」と言った執事の名前の表情はまだ曇っていた。
その夜のことだった。


「名前、もう寝ろ」
『はいはい』


シエルに促され俺はつけていたテレビを消し、寝室へと向かった。


『もう寝るか』


ベットに入って天井を眺めてボソ、と呟いた。
そして目を瞑ったとき電話がなった。


…一体こんな時間に誰だ?


キレ気味に電話にでると相手は妹のエリザベスだった。


――その声をまともに聞くことはゆるされなかったけど










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