※猫又、現パロっぽい感じ注意。













ごろにゃん、とでも言いそうである。リヴァイの膝の上をこれでもか、と言わんばかりに堪能するハチワレ模様の猫にリヴァイは呆れを感じた。
「おい。エレン。もういいだろ」
猫の名前を呼んで制止をかける。名残惜しそうな雰囲気を見せたが猫はすぐに膝から降りる。しなやかな体躯は音も立てず床に降りた。
書類から目を離さずひたすら作業に打ち込むリヴァイの元を猫は離れ、台所に行く。何やらお湯を沸かす音が聞こえてきたあたりで、ひょこっと猫でなく少年が顔を出した。
「リヴァイさん、お茶煎れますけど何か飲みますか?」
「コーヒー」
「判りました」
リヴァイは淡々といつも通り受け答えする。少し経って、エレンがコーヒーを持って来た。手渡しで受け取ってすぐさま飲む。でないと眠気に勝てない。あと少しなのだから。
エレンはベッドに寄り掛かって宣言通りお茶を飲んでいた。ゆらん、と視界を掠めるそれをリヴァイはちらりと見遣る。
「エレン」
「はい」
「尻尾」
うぉ!?と声を上げてエレンはそれをいそいそとリヴァイの目につかない様にする。完全に無意識だったらしい黒い尻尾は、今やぎこちない動きを見せながらエレンの影に隠れた。
「あとどのくらいですか?」
「こんだけだ」
ひらり、書類をちらつかせるとエレンは顔を喜色に染め上げた。判りやすい猫だ、とリヴァイは思う。ゆらん、と揺れる尻尾は確かに二本あって、その二本の尻尾は、よもや猫の道から外れた事の証明である。俗に猫又という奴だ。妖怪にカテゴライズされるらしいが、人型になれる事と猫の姿のまま人語を話せる事意外、エレンに目立ってそれらしい所はなかった。
最後に名前を殴り書いて書類の始末を終える。お茶も飲みきってベッドの上でごろごろと寛いでいたエレンは、リヴァイがベッドに寄ってきた事に気付き身体を起こした。
何とも言えない唸りに似た声を上げてベッドに沈む主人を見て、エレンは疲れてるなあと苦笑した。骨張った身長の割に大きく見える掌が近付き、思わず擦り寄る。喉を撫でられるとごろごろと音が鳴った。眠たくなってエレンは何度か瞬きをした。心地好い。
ふと指先の感触が違うものになったのを感じ、リヴァイは視線を少し上げた。尻尾の二本ある金の瞳の猫が歩み寄って、仰向けに寝転ぶリヴァイの腹に乗っかった。了承を得るように一声鳴く。
リヴァイはおざなりに頷いて、腹の上にかかる少しばかりの重みを感じながら眠りについた。





左手とラッキースター




2012.02.12