※捏造両親、幼少期














「R9に行こうか」
サブウェイマスターをしている両親は忙しい。たまの休みくらいゆっくりすればいいのに、と幼さに似つかわしくない事をノボリとクダリは思うのだが、しかし構ってくれるのは嬉しいものだ。
そうして向かったR9で二人は五個程のモンスターボールを買って貰った。クダリは喜び、ノボリは何故と首を傾げる。
「貴方たちもそろそろ相棒を見付けてもいいと思いましてね」
中途半端な丁寧口調で母は言う。仕事の時ははきはきと敬語を喋るので、よく母についていくノボリにその口調はすっかり移ってしまった。逆に寡黙すぎて片言を喋っている様な父の口調は、見事にクダリに馴染んでいる。
「ほんとに?やった、ぼくバチュル捕まえたい!」
「ちゃんと、育てられるか?」
「もちろん!」
父に満面の笑顔でクダリは返す。その父の瞳がこちらを向く。ノボリは、と聞かれた気がしてもごもごとノボリは答える。
「…………決まりません」
そうなのですか?と母が問う。
「ダブルバトル向きならばモロバレルとかバッフロンですかねぇ」
「おい」
「……………あら、あたくしとした事が。失言ですね。ポケモンはバトルだけの為にいる訳ではないのに」
職業病かしらと軽く空を仰ぐ。ダブルトレインを担当する故に、どうも実戦向きに考えてしまう傾向があるらしい。しかし今彼女があげたポケモンは、彼女の手持ちにいない。
「まあ、後回しにしてもよろしいでしょう」
タワーオブヘヴンに行きますよ。


タワーオブヘヴンには、両親の最初の相棒が眠っているらしい。ノボリとクダリは、会った事がない。生まれる前に死んでしまったのだ。
「終わったら、クダリはバチュルを捕まえに行きましょう」
「うん!」
置いていかれるかの様な朧げな不安がノボリの胸に満ちる。見計らった様に父がぽんぽんとノボリの頭を叩く。
「焦らなくても、いい」
「……………はい」
父がよしと頷く。ノボリは、そんな父の大きくて広い背中を見上げた。こんな風に、強くなれる日は来るのだろうか。
「………………?」
ふと視界の端に何かが映る。何だ、ノボリは目で追う。墓の陰に隠れて、それはちらちらとノボリを伺う。好奇心のままに近付いた。
「…………ヒトモシ、ですね」
ゆらゆらと揺れる青い炎。蝋燭の様な白い身体に触れると、少しばかり熱かった。
ヒトモシはくいくいとノボリの袖を引く。しかし、墓参りに行かねばならない。ノボリは振り返る。そこに家族の姿は無かった。―――置いて行かれた。自身の過失と家族の散漫さを呪うが、どう考えてもノボリが悪かった。
「…………案内してくれますか?」
ヒトモシが何度も頷く。ちらりと、道案内をしているヒトモシは、その対象の生命力を食べているという噂を思い出したが、その考えを振りほどく。かつての父母の相棒の名を告げ、ならばこっちだと前を行くヒトモシの後ろをついて行った。
―――バチュルがいいな!
元気にそう最初のポケモンを決めたクダリを思い出した。
「ねえヒトモシ」
ノボリは口を開く。







いちにのさんで魔法にかわる







「父さん母さん」
「ん?」
「わたくしこの子がいいです」