※モブ女体化→影山茂依(もえ)
※そこはかとなくレイプ。
※R-16くらい?









嫌だ、と泣く声は聞いてやらない。


そろそろ夜も肌寒くなってきた頃の事だった。風呂場で律はあるものを見つけた。血にまみれた下着。デザイン的にはまだ幼さを感じるチェックのそれはサイズの面から見ても姉の物だろう。血で重量が増したそれを見、律はその経血をべろりと舐めた。舌の上に載った鉄に似た味とそれ以外の何か。そうか。姉も。そうか。一人納得して、律は脱ぎ掛けだったシャツを脱いだ。いつ行動を起こそうかと、風呂に入りながら思案することにする。
姉の生理は遅い方だった。
早い方はもう小学生中学年のうちに初潮を迎えるらしい。少なくとも姉もそのようにして子供から女の身体へと変化しているものと思っていたのだが、どうもその様子がない。そして下着を見つけたその日、ああやっとかと律は思った。律が小学六年生、姉こと茂衣が中学一年生になった秋の事である。
枯れかけの木がざわざわと音を立てて泣いている。感化されるように部屋の中も静かになって、そうして両親が寝静まる頃に律はとうとう姉の部屋に忍び込んだ。それが今年、律が中学生になり姉が一学年あがった年の事だ。
姉に憧れの人がいることも知っていたしその手の知識だって中学生なのだから授業で習っているだろう。抵抗と言うにはあまりに弱々しいが、明確な拒絶の意思を持つ手足が律を殴った。ただそれは律からすればあまりに幼い抵抗だった。身体ができているわけではない、何しろまだ十三歳だ。やはり原因は一概に姉にあるといえた。あまりにも、弱々しい抵抗。本気を出せば超能力を出さずとも律を撃退するくらいできるだろう、いかに体力がないといえど。
その中途半端さはより律を苛立たせ興奮させた。弟がこんなことをするのが信じられないのか、はたまた姉故に無意識に力を抑えているのか。どちらにしたってそのような様では彼女の末路は決まったようなものだった。
「いやだ」と「はなせ」を繰り返す声はただ律の背筋を走る奇妙な感覚を助長するだけだった。未発達の胸部を触り女性器としての役割もうまく果たせないだろう幼い局部に、これもまた育ち切っていない己の屹立を入れた。
「いたい、ぃ、いた、律、痛い、やだぁ、いたいぃ、ぃ」
悲痛さしか滲まない声に快楽なんてものはなく。ただ自己を満たすだけのその行為の全てが終わった後に律は気づく。これは、レイプだ。
しかしやめられるはずもなかった。幼い彼の倫理観はとっくの昔に狂っていた。常識も狂気も倫理も現実も空想も拒絶も寛容も役に立たない。全ての頂点にいるのは姉で、その姉を崇拝すると同時に穢すのもまた律にとって至上のものであったが故に。
だからその度に幼かった律は泣いた。
ごめんねと。最低の自覚はあった。ひとつしか違わない姉を蹂躙してあまつさえ愛していると囁くのだから。愛のなんたるかも知らないというのに。そんなもの、誰も知れないというのに。
そしてその度に幼かった姉は許した。
いいんだと。最低の自覚はあった。ひとつしか違わない弟のぎらつく目が何よりも全てを証明していたのだから。許す以外の術を知らなかった彼女が、何よりも一番残酷だったのかもしれない。
「ぃあ、あ、………っりつ、ぅ、………ぁ、は、」
「ねえさ、姉さん、ねえさん」
いつだったか律は許しを請うことをしなくなったし、茂衣も泣かなくなった。結合部から湧きあがるようになったのは痛みではなくて快感になって、潤んだ視界に映るのは罪悪感の皮をかぶる事をやめた弟のけだものの目だった。
胸中を支配するのは諦めだった。ああ、もういいや、と。
乱れた髪をかきわける律のしぐさは、確かに優しかったから。
ねえ、ねえさん。胡乱気な視界と言葉をうまく脳に伝えられない鼓膜が震える。荒い呼気と、掠めるような低い声。
「孕んで、よ」
目の前が真っ暗になった。





孵化音




2012.10.16