《五月病平古場凛。大学生は空き時間を勉強に使わない》
某大学、学生食堂。僕らがここへ来たのは、確か1限が終わって10分もしないくらいだったと思う。賑わいが増してきたことから察するに、昼食時が近づいてきたのだろう。つまり、僕らはふたり揃って、2限の90分ぶんもの空き時間を“学生の本分”に割くでもなく、ただのんべんだらりとお喋りに費やしていたというわけだ。
「や〜さんや〜…」
席取りをする学生の姿を眺めていると、向かいの席から力ない声がした。それでそちらに顔を向けると、案の定。テーブルにだらしなく金髪が広がっていた。大学に入ってから抑え気味だった方言がフルに出るほどか。そんなにもお腹が空いたのか。僕は肩を竦めて、「はいはい。じゃあなにか買いに行く?」とその肩を揺さぶった。
「うー…」
期待はしていなかったが、やはり返ってきたのは死に損なったような呻き声だけだった。
「凛」 「ぬー…?」
しつこく揺すり続けていると、なんとか返事は返ってきた。けれど、髪と腕の間からぼーっとこちらを見上げてきただけで特に大した反応はない。こいつ、僕のはなし聞いてなかったな。
「食べないの?お腹すいたんでしょ?」 「すいた」 「動きたくないの?」
問い掛けるとこくりと凛の頭が動いた。僕はそう呆れていたわけではなかったけれど「もうっ、」と膨れて凛に軽くデコピンした。「あがっ」と飛び出した声に笑いながら僕は席を立つ。
「じゃあ僕が買ってくるから。何食べたい?」
すると凛がチョイチョイと手招きした。おいおい、そんなに動きたくないのか。仕方がないので凛の顔のそばまで耳を寄せてやった。
「やーが食べたいさぁ」
凛に思い切りのデコピンをかました僕は、その足でゴーヤーチャンプルを注文しに行った。アホか!と不満をこぼす僕の足取りは軽かった。
Q.今日だけすごい力を持てるとしたら、どんな力がいいですか? A.ゴーヤーチャンプルを完食する能力………
書いておいてなんですが、不二くんと凛ちゃんが同じ大学に通っている図って想像できません(笑) |
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