《※首を傾げる手塚国光をご想像のうえお読みください》
「手塚がほしい」 「は………?」
不二が突然にそんなことを言うものだからつい俺らしくもない声を上げてしまった。
「…俺はここに居るが」
気を持ち直そうと、ずれてもいない眼鏡を押し上げながら返せば不二は不満を露わに「ぜんっぜんわかってない。わかってないよ。手塚は」と呆れた。
わかってたまるか。今、すぐ隣にいるというのに俺がほしいという気持ちなど解かりようもない。
「あーあ、もうっ」
むすっとしながら不二が突っ伏すのは生徒会室の机。まぁ、生徒会室の、とは言っても実際的にはただの余りものだ。他の教室の机と変わりはしない。それどころか少しグラついている。どこかの俺様が生徒会長を務める学校とはまるで違う。
そんなボロの机であるから、不二があーだこーだと文句を言いながら足をバタバタやる度に机がガタガタと音を立てる。堪らず眉間に皺が寄るが、突っ伏すあいつは気付きもしない。
俺の前ではわがままで仕方のないやつなのだ。 こんな姿、越前にも見せてやりたいものだ。と思いながらも手は休めない。やってもやっても無情に溜まりつづける仕事を熟さねばならない。正直、とても中学生の生徒会の仕事量とは思えない。
「あー、手塚がほしい」 「だから俺はここにいるだろう」
バタバタガタガタやるのにも飽きたのかポツンと呟いて、不二はやはり突っ伏したままで静かにむこうを向いている。
「僕のクラスのさ、前川さん。わかる?」 「あぁ、」
確かバスケ部のショートカットの女子だったか。前にあまりにスカート丈が短かったから注意した覚えがある。それに際して「手塚くんがセクハラ!」などとアホなことも言われた気がする。
「彼氏とディズニーランドだってさ。」 「…?そうか」
てっきり「前川さんからセクハラされたって聞いた。どういうこと?」と詰め寄られるかと思っていたがどうやらそうではないらしい。
「手塚のクラスの木下さん。」 「あぁ、」
数回しか話したことはないが色の白い上品な女生徒だ。
「遠距離恋愛らしいよ。」 「そうだったのか。」
そんなはなしは聞いたことがないが。しかしそれを不二が知っているとなると、不二は木下さんと親密ということだろうか?さらに眉間の皺が深まるのが自分でもわかる。それを見たのか、それとも前々からそう思っていたのか、
「手塚ってあぁいう子好きそうだよね。」
などと、不二は下らないことを言う。
「…なにを言っている」 「毎日電話してるらしいよ。もう2年半付き合ってるのに」
いまいちはなしの筋が見えないが。とりあえず「そうなのか」と返事をした。
「あーあー、手塚がほしい」 「だから、」
「僕に構ってくれる手塚がほしい!!!」
Q.買いたいものは何ですか? A.僕に構ってくれる手塚。って、数日前までは思ってたんだけどね。無言でシーのチケット渡されちゃった。ランドじゃないんだ(笑)毎晩じゃないけどなんか電話かかってくるようになったし。無理させちゃったかな。ごめんね手塚。ありがとう。…でも手塚、正直電話でも無言でいられるのは、つらい。
でんわで無言はつらいっすよね。 |
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