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階段を上って三階まで行くと、そこではDVDやCDが綺麗に棚にディスプレイされていた。
CDショップのように軽い説明が添えられているものもあり、とても図書館だとは思えない。
「三階だったのか!通りで着かないと思ったんだ!」
そう言うアンデルセンさんに、俺は苦笑いになる。案内出来ない司書って、いるんだな……。
「……あの、もしかしなくとも」
「ああ…ごめんな!俺、方向音痴なんだ。カウンター業務ばかりだから……あんまり本の場所とかも分かってなくてさ」
やっぱり。カウンター業務ばかりというのも図書館内で迷子になるのを防ぐためなんだろうな。
そういえば、さっき他の司書にカウンターを頼んでいた時に引き止められてたような気もする。
「じゃあ俺はこれで……」
そう言ってカウンターに戻ろうとするアンデルセンさんの腕を慌てて掴んだ。
このまま行かせたらまた迷うに違いない。
「も、もうちょっと案内してもらえませんか……?」
そう言って俺は引き留めたのだった。
二人でオーディオビジュアルコーナーを回る。
最新のものではないが、有名な作品は揃っているようだった。
棚は洋画、邦画、アニメ、音楽などカテゴライズされており、あいうえお順に並べられている。
洋画の棚を見ていると、その中になかなか機会が無くて見れなかった映画のDVDを見つけた。
「これ、見てみたかったんだよなー」
「お、その作品は見たけど良かったぜ!最後に主人公がヒロインの……」
「ストップ!!ネタバレはやめてくれよ!」
「へへっ、わりぃ……」
そのDVDを借りることにして、カウンターへと向かおうとすると
「あ!……これもオススメだぜ!」
そう言って渡されたDVDは、画家を目指す男の子と犬の話のアニメだった。最終回で男の子と犬が亡くなり、天使に連れていかれるシーンが有名だが、最初から見たことはない。
キラキラとした瞳で期待を込められて見つめられた俺は、そのDVDを受け取るしかなかった。「そうだ!俺が貸出手続きするよ!案内してくれたお礼だぜ!」
と言ってアンデルセンさんは貸出カウンターに元からいた司書の人にちょっと、お邪魔しますねと言ってよくコンビニでピッっとするアレらしきもので自分の名札をピッとしていた。
「じゃあ図書館利用カード出してくれよな!」
「えっ?あっ……」
どうやら借りるためにはカードがいるらしいが、図書館で何かを借りるなんてことは一生無いと思っていた俺がそんなもの持っているはずがない。バツが悪そうな顔をしているとアンデルセンさんがくすくすと笑っていた。この人本当よく笑う人だなぁ。
「本がだーい嫌いな君はズバリ!図書館利用カード持ってないんだろ?」
決まった!と言わんばかりの清々しい顔で言ってきたので反論したくなったが、悔しいがその通りなので首を縦に振るしかなかった。
「じゃあカード作ろうか!この用紙に必要事項書いてくれるかな?」
渡された用紙をカウンター端の方で記入し、またアンデルセンさんに渡した。
「遊城十代君な!はい、これ!無くすなよ!」
「ありがとうございます。早速利用したいんですが…」
「あぁ!じゃあカードとDVDお預かりしますね」
例のピッっとするやつで作ったばかりの俺のカードとDVDをピッとしてまた俺に渡してくれた。
「毎度あり!DVDの貸出期間は一週間だから忘れるなよ!」
「あっ、はい!わかりました………あっ!?」
借りるということは当然返さないといけないわけで、また一週間後に図書館来ないといけない。またこの空間に来ないといけないのかと思うと微かに頭痛がした。
「それじゃ、俺は持ち場に戻るよ」
そう言いアンデルセンさんは来た道とは真逆の方向に歩き出したので慌てて「俺も帰ります!」とアンデルセンさんの横を歩きさりげなく正しい道へと促した。
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