さんじゅうよん
side:錫也
羊が星河に挨拶(頬にキス)してからというもの、俺の胸は訳のわからないえぐみに支配されていた。
いや、わかってはいるけれど
認めてしまえば、幼い頃から抱いてきた感情を全て否定することになってしまう気がする。
小さく息を吐いて最近は専ら羊のことしか話さない星河が今日も来ているだろうと、出来上がった菓子を持って調理場を後にした。
─────…
教室につくと楽しげな星河の声が響いていた。
今日も元気だなとか、当たり障りない会話をしようと思案しながら近づくとそこには月子が居らず、哉太と星河だけが居た。
前まではそこまで仲良くしていなかった星河達はお互いに名前で呼びあっていて、なんだか無性にイライラする自分を往なす。
なんだ。
俺らしくないじゃないか。
星河はただ友達と話しているだけだろう?
俺に気づいた哉太は青冷めた表情で星河に目配せをしていた。
それにすらイライラする。
本当にどうしたんだ、俺。
「あ、錫也っ!昨日ぶり!!」
「よ、よぉ…錫也。」
きらきらとそれは嬉しそうに微笑む星河に自然と頬が緩む。
「何か変だぞ?哉太」
「いや、別に何でもねぇよ!?」
「今日は何を作ったのー?」
「マカロン。星河はラズベリークリームのチョコレート生地が好きだったよな。はい。」
何故かあたふたとする哉太を無視して、星河に渡すと可愛らしい笑顔で美味しそうに食べてくれた。
作った甲斐があるってもんだ。
「美味しいーっ!錫也、もう嫁に来い!!!」
その一言に冗談だと分かっていても
「星河が嫁の方が俺は嬉しいんだけどな。」
とか。
考えないうちに声に出していて。
星河の言っていることは耳にはいらずに
これじゃあ、俺が星河を好きみたいだ確信してしまって、どきりとした。
ああ俺、星河が好きなんだ。
(哉太にその気がなくても、取り敢えずは牽制。)
─*─*─*─
ぴゃああああ。
錫也が覚醒しちゃった((((;゜Д゜)))
どうしよう。
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