にじゅうご


side:錫也



暗い夜道。男女二人。
少女漫画的には危ないよな、なんて右腕に感じる自分の体温とは違う温もりに目を向けると、その子は涙をいっぱいいっぱい溜めて前を見つめていた。

この肝試しが始まってから彼女の眉はハの字のまんま。





「星河ちゃん…大丈夫?」


「……うううううん。」


「それじゃどっちかわからないよ。」





苦笑を溢しながら問うと、説得力のないくしゃくしゃな顔で平気って意味の方と言ってきた。

足を震わせながら言っても、その顔で言っても、やっぱり説得力にかけている。


幼なじみの月子も怖がりだけど、星河ちゃん程じゃあなかったなあ…


そんなことを考えながら林道を彼女に合わせるように、ゆっくりと歩く。

と言っても、星河ちゃんは俺にしがみついて先に進みたくなさそうに後ろに後ろに体重をかけてくる。だから、半ば引きずるようにして歩いているから正直言って疲れる。

でも、本当に怖そうにしているからなかなか言い出せないし、なんだかよく分からないけど嫌な気持ちにはならなかった。





「ひぃいっ…」


「あとちょっとだよ星河ちゃん。頑張ろう?」


「うん!」




先生方の脅かしも少なくなってきて、もう終盤に差し掛かっているんだなと星河ちゃんの恐怖を少しでも和らげてあげようと応援すると、可愛らしい笑顔でいい返事を返してくれた。

きゅん、と胸が少し高鳴った気がしたけど、気のせいだとさして気にもとめなかった。


その後は割りとスムーズに道を進められて、ゴールに辿り着くことができた。

月子が俺達のところに駆け寄ってきて、すごく心配そうに、でも嬉しそうに星河ちゃんに声をかけていた。


月子は優しい。
俺が守っていかなきゃいけない、大事な大事なお姫様。
俺は今までずっと、月子が好きだった。


でも、俺の右腕から温もりが消えた途端にチクリと心を針で刺されたような気になった。


あれ?なんでだ?


俺は月子が好きなんだよな……?

(田中、随分遅かったね。)
(遅くたってゴールできたからいいしね!土萌くんの棘のある言葉にだって屈しないしね!!)
(羊くん、こう言ってても星河くんのこと心配してたんだよ?)
(ほ、ほんと!?)
(月子、言わないでよ……)


―*―*―*―


おひさな更新!
錫也わかんね\(^P^)/w





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