夏日にそっぽ向く





茹だるような夏。
みんみんうるさい夏。
何もやりたくなくなるけれど、そうも言ってられない、夏。

なんで、私、弓道部なんかに入ったんだろ。
なんて疑問は大好きな大好きな彼の姿で霧散する。

そりゃそうよ。だって私、誉が入るって言ってたから入ったんだもの。
だから、夏の大会なんて実のところどの部員よりも入れ込んでないのはしょうがないことで。
でも、誉が皆で頑張ろうって、名前も一緒に勝とうねって言うから、頑張んなきゃとも思うわけで。

背をピンと伸ばしたキレイな弓構えを休憩中の私はぼんやりと眺めた。
ベタつく気温から逃げるように少し冷やりとする板張りの床に体を横たえて、顔に張り付く髪をどかしどかしその姿を見ていれば、宮地くんに休むならせめて座ってください先輩、と怒られる。
いささか、行儀が悪かったかと思いつつも体を起こす気力が湧かない。宮地くん。悪いが、無理だ。



「うーん。あつい。」


「…名前?お行儀が悪いよ?」


「あ、誉だー」



緩く瞼を下ろして、冷たい場所を求めてごろごろとしていれば上下反対に見える誉が真上に見えて。
こっちを向いてくれたことが嬉しくて笑うと、誉も微笑み返してくれた。ふふふ、誉かっこいい。



「……起きて、ほら。袷がはだけちゃってる。」


「んー起こしてー」


「困った子だなあ、名前は。」



そう言いながらも、甘えを聞いてくれるから好き。

いつもよりちょっと熱い誉の右手に引かれて起き上がる、その勢いのまま抱きつけば立っていた誉はバランスを崩して尻餅をついた。



「うふふ。誉ー」


「もう、名前ったら…今日はなんだか甘えただね。」


「なんだか、疲れちゃったの。癒してー」



首に回していた腕をゆるめて、誉と視線を合わせれば困ったように微笑まれた。
まつげ長いなぁ誉。



「うーん…まだ練習があるんだけどな。」


「きゅーけーだよ、誉。水分補給とか必要だよ!」


「そうだね………うん、休憩しようかな。」


「やったあ!じゃあ、スポドリ持ってくるね!!」



あ、待って。
と立ち上がって背を向けた私の手を誉に引き寄せられて、ぐらりと傾いた体勢に今度は私が尻餅―おしりの下には誉の足があったから痛くはなかった―をつく。
どうしたの、と聞く前に唇を塞がれて。突然のキスにたじろいでいれば、いたずらっぽく誉は笑った。



「…水分の前に、名前補給させて。」



─*─*─*─


神聖な道場で何をやっている!と、言いたくても言えない宮地くんとか。





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