星が降る、眠れない夜に。
夜中も夜中。
なんだか、全然眠れなくて。
気晴らしに散歩でもしようかな、なんて外に出たはいいけれど、門限はバッチリ越えているわけで。
少し楽しくなっちゃって、小学生のときに親に内緒で夜遅くに外に出たときのことを思い出した。
悪いことだとわかってはいても、何故だかワクワクとしていたものだ。
あのときも、確か星がきれいだった。
今思えば、あれがきっかけでこの学園に入学したような気がする。
キラキラと私を魅了する星に心は嘘をつけずに、ドキドキと高鳴ったいたのが今も鮮明に思い出せる。
街灯から少し離れたところを歩いていると、左斜め前に人影が目に入った。
先生かと思って、少し身構えているとそうでもなくて。街灯に照らされている茶髪は同じクラスの東月くんだ。
とりあえずは少し安心した。
先生に怒られるのはいくら高校生になったとしても嫌なことに違いはない。
でも、なぜ、彼はここにいるのだろうか。
そう、思いながらも通り過ぎようとしていたら、じっと見すぎてしまっていたようで、視線がかち合ってしまった。
「だ、誰だ!?」
「…!、…こんばんは。東月くん。」
「…名前、ちゃん?!どうしたの?こんな夜中に、」
「……それはこっちの台詞でもあるんだけどな。」
そろり、と近づけば。
驚いて目を丸くした東月くんの顔がよく見えた。
「女の子一人で、危ないじゃないか。よくないぞ?」
向かい合うと、彼は少し眉尻を下げて心底、心配そうに言った。
私は、あしらうように言う。
「……そうかな…私は平気だよ。月子ちゃんなら危ないだろうけど。」
そう言うと決まって彼は息を詰めて、声を出さない。
胸がじくりと傷んだ。
これは、他でもない彼だから出てきた言葉だ。
月子ちゃんが一番な、彼だから。
私は少し視線を落とした。
そういえば、何時からだろうか。
胸が苦しくなり始めたのは。
優しい月子ちゃんを嫉むようになったのは。
彼を好きになったのは…
私は大好きな月子ちゃんをどす黒い嫉妬で歪んだ目で見たくなかったから、最近までずっと彼女や彼を避けていた。
もっとも、彼女は私の様子が変だとすぐに気づいてくれて私が避けていた理由を知っていたから、彼女とはそれほど離れていた訳ではなかったし、彼女は協力してくれていたのだけれど。
羨ましく思う気持ちは膨らむ一方で―…そんな自分が嫌になって、今に至るわけである。
「……名前ちゃんだって女の子だ。夜は危険なんだぞ。」
「私を襲うような酔狂な人間なんていないよ。」
依然として私は虚勢を張る。
そうしないと、今までの自分の頑張りが自分自身から否定されるような気がした。
自分自身のことは私が一番知ってる。
だから、私は彼に会いたくなかったということもわかってるし、それと同じかそれ以上に彼に会いたかったってことも理解してる。
とんだ矛盾だ。そんなこともわかってる。
悩み続けている頭を冷やすために散歩に出たのに、これでは逆効果だな。なんて、ため息をついた。
「……ねぇ」
「…なに?」
「その、名前ちゃんが言う酔狂な人間っていうのがここにいるとしたらどうする。」
少しの沈黙の後、突然東月くんが私の手首を掴み真剣な声色で言った。
「……どうもしないよ。そんな人いないもの。」
「…本当にそう思う?」
「何が言いたいの…?」
「…俺は君のことが好きなんだ、ってこと。」
彼の瞳には揺らぎがなかった。
それでも私は信じられなくて。
夢のようで。
大袈裟に首を横に振って嘘だ、と呟いた。
手首から、しっとりと伝わってくる温もりに気づかないフリをして、夢だと決めつけたかったのに。
その温もりは手首から体全体に広がって、自分とは違う香りに包まれてなにも言えなくなってしまった。
「…嘘なんかじゃない。俺は名前が好きだよ。」
「だって、月子ちゃんは…?私なんかで…?」
「月子はただの幼馴染み。それになんか、なんて言うな。俺は名前がいいんだよ。」
どうか連れていって、と願った世界は目の前に広がり始めた。
彼越しに見た星空はさっきよりも輝いて。
キラキラと私を魅了して止まなかった。
─*─*─*─
なんか長いし、支離滅裂な希ガスwww
MUSIC By:starlight parade//SEKAI NO OWARI