だから、ちょっと。
「さあ!やってきましたよ!!ということで……琥太にぃせんせーどうぞ!」
「……なんのことだ?」
いきなり保健室に来たかと思えば、バカデカイ声で叫んだ名字。
休んでいる奴がいたらどうするんだ?
ったく。
何ともなしに頭を掻き、叱ろうと思い椅子から立つとコイツの声に引き寄せられたのだろうか。
大きな音と共に郁が現れた。
「お前……」
「やあ、名前ちゃん。偶然だね。」
"偶然だね"っておい…
「おー!郁ちゃん!!いいところに!!」
「はあ…まあいいか。んで、名字はなんの目的で来たんだ?」
「星月せんせーに"俺はヅラじゃない!桂だ!!"と言ってほしくて!!」
「
……は?」
「そうそう。郁ちゃんにもね言ってほしいことがあるの!!」
「なになに?名前ちゃんの頼みならなんだって聞いちゃうよ。」
名字の肩を抱きながら至近距離で話している郁とそれに動じることなく楽しそうに話している名字を横目に固まっていた俺は、ガタンとなった音で我にかえった。
「水嶋ぁああっ!!また、サボりやがって……って、おい!!?俺の生徒に手を出すなぁあああ!!」
「あ!直獅せんせー!!」
「げ…陽日先生……」
いつか保健室のドア、壊れるんじゃないか?
より一層うるさくなった保健室に眉を寄せる。
ああ、頭が痛い。
「郁ちゃんにはね、うーんと……長いんだけどいい?」
「うん。いいよ。何を言って欲しいの?」
「"君が明日蛇となり人を喰らい始めるとして、人を喰らったその口で僕を愛すと咆えたとして、僕は果たして今日と同じように君を愛すと言えるだろうか。"っていってほしいです!!ちょっと寂しそうな声で!!!!」
いつから名字はポエマーになったんだ?
郁は意味がわからないという顔をしているが、名字のキラキラとした瞳に気圧されたのか、好きな女のいうことを無下にはできないと思ったのかその"セリフ"を溜め息の後に言っていた。
すると、直獅に言われ離れた郁に名字の方から抱き着き直獅が真っ赤な顔で怒った。
「もー!!郁ちゃん大好きぃいいいっ!!」
「僕も名前のこと大好きだよ。」
「おっお前らぁああ!!」
「あ!!そう言えば。直獅せんせーにも言ってほしいことがあるんです!!」
思い出したように振り向いた名字に直獅は怒ることを止め、少し嬉しそうに、おう、なんだ。と言った。
「ちょっと高い声で"ポペラ可愛い!!"って言ってほしいんです!!!!直獅せんせーじゃなきゃダメなんですっ!!」
鼻血がなけりゃ、上目遣いで……可愛いんだろうがな…
直獅はそんなことは見えていないようで、更に顔を赤くしていた。
「そんなの、名字のためなら楽勝だ!!」
「ありがとうございまっぷ。琥太にぃせんせーいきなりなんですか。ビックリするじゃないですか!!もー。」
「
鼻血が垂れ流しの女子ってどうなんだ。」
「ぅえ??ああ。ほんとだ。琥太にぃせんせーありがとう!…で、直獅せんせー!!言って言って!!」
「ぽ…ポペラ可愛い!!」
「直獅先生。結婚しましょうっぃた!!今度はなんですか!!?」
言わせたくなかったのか、ほとんど反射的に手が出た自分に驚いた。
いやあ…
反射でデコピンが出るなんて人体とは驚くことばかりだ。(ところで、琥太にぃせんせーはさっき私が言ったセリフ言ってくれないんですか?)
(俺はヅラじゃない、桂だ。)
(そんな、さらっと言うセリフじゃないんですけどー)
(また、今度ちゃんと言ってやるさ。)
―*―*―*―
こんなに長くなったのはあれだ。
郁ちゃん改め、ギンのセリフが長すぎたからだ…orz
まあ、というわけで中の人シリーズ第二弾!!