花束







セブンス・ヘブンの隣の隣に私の経営している花屋がある。

激しい闘いの後、街もやっと活気が戻ってきて、少ない品数だけれど花屋を開くことができた。

ご近所さんのティファさんにはよくしてもらっていて、お店に飾る花を頼んでくれたりするし、私の営業時間が終わるとお店に呼んでくれたりする。


ところで、私には好きな人がいる。
ティファさんの幼馴染みさんだ。

彼はデリバリーサービスをしているので、極偶に私のお店に配達の仕事が舞い込むと次いでにと配達してくれる、優しい人で…
いつの間にか、私は惹かれていた。





「いつも、すみません…クラウドさんにもお仕事があるのに……」

「女ひとりで、夜道を歩くのは危険だ。それに、たいした手間じゃない。」





でも、私は
彼に想いを伝えることはないだろう。

ティファさんとクラウドさんはお似合いで…
入り込む余地など微塵もないからだ。


遠くから微笑ましい二人を見ているだけで、私はお腹いっぱいになれる。
少しだけ………哀しいけれど。


今日もクラウドさんは優しくて、しがない花屋の配達を手伝ってくれる。

バイクで走り去る彼を見送り、溜め息をひとつしてから店内に戻ろうと踵を返すと隣から元気のよいティファさんの声が私の名前を呼ぶのが聞こえた。





「名前ー!!」


「ティファさん、こんにちは。」


「さん付けしなくていいって言ってるのに…もう」


「なんか、癖で…すみません。で、何か御用事でも?」


「あ、そうそう。明後日ねクラウドの誕生日だからバースデーパーティーやるんだけど、名前も来ない?クラウドも喜ぶと思うの。」





ティファさんは笑顔で一気に捲し立てると、小首を傾げてどう?と聞いてきた。

勿論断る理由も無い私は、喜んでと返した。


しかし、誕生日となるとプレゼントが必須だ。

経営するのもやっとで、今手持ちの自由に使えるお金は後半月を暮らしていくためのものしかない。

もっと早くから知っていれば、節制してプレゼント用のお金を用意できたのに…
ティファさんの誕生日にはちゃんとプレゼントをしたのに、恋慕っているクラウドさんの誕生日にプレゼントを渡せないなんて嫌だ。

ふむ、どうしようか。
と考えている内にクラウドさんの誕生日は前日に迫っていた。

昨日の今日でプレゼント用のお金を用意することは蜂蜜嬢でもない限りは無理だと決めつけていたため、お金は勿論ない。

したがって、プレゼントも用意できていない。


はあ…
本当にどうしよう……


目につくのは店先の花達ばかり。


……あ。
花束でいいかな…?

いつものお礼を込めて、とか…
でも、男の人だからなぁ
でもでも、お金ないし…


思考が堂々巡りになって、太陽が沈んで空が星に彩られ始める。

それからは腹をくくって、花束にする花を選んだ。


――――…次の日
私は、少し乙女チックかなと思いながらも赤を基調とした花束を抱えセブンス・ヘブンに踏み入った。

前のお仲間だとかが居る中、私一人だけ邪魔じゃないだろうかと懸念していたが、ティファさんに気にしなくて大丈夫よと言われ少し安心した。


プレゼントを裏に置かせてもらってから暫く経つと、ガチャリ。
このパーティの主人公が仕事を終えて帰ってきた音がなった。

おめでとう!!という歓声に包まれ彼は一瞬驚いた顔をしてから照れたようにはにかんだ。

そこから、楽しい時間はあっという間でプレゼント渡しがやって来た。





「じゃあ、名前からでいいわよね?」


「え…!?あぅ、はい……分かりました…」





まさか最初だとは思っていなかった…

でも、最初に渡した方が恥ずかしさが少ないからいいかなとか考えつつ裏に回り花束をとった。


うん。まだ萎れてない。





「クラウドさん。お誕生日おめでとうございます。あの…今日が誕生日だと一昨日聞いたのでプレゼントが用意できず、花束で申し訳ないです…」


「いや、嬉しいよ。ありがとう名前。」


「え、えっと…花は赤を基調にリナリアとカーネーション、アクセントに霞草です。クラウドさんへの気持ちを花束に込めました……」





口では言えない気持ちを花束に。
花言葉を考えると、恥ずかしさが込み上げてきて俯いて逃げ出したくなった。


でも
きっと花言葉は知らないだろうから、平気よと自分に言い聞かせた。





[親切なあなたが好きです、私の恋を知ってください]


誕生日の次の日
クラウドさんが私の事を抱きしめて俺も名前が好きだと言われたときには、驚きと嬉しさで目から涙が溢れていた。


―*―*―*―


花言葉は組み合わせてしまったので、若干意味合いが違いますがそれはご愛嬌ってことでwww

クラウド誕生日おめでとー!!
愛してるよー!!\(^P^)/




back