たったひとつの触れる方法
今日もまた。
金髪の小さい子が七海さんを連れていく。
そして彼が笑って見送る。
そのあと、愁い揺れる瞳とかち合い。
放課後、彼の相談に乗る。
それがここ最近の私の日課である。
随分と仲良くなれた。と、おもう。
彼の相談は大抵遠回しで。
だけど、まあなんとなくはわかる。
ずっと見てきたからね。
「何度も何度もすみません。」
「いいよ、気にしないで。私は四ノ宮くんと話せて楽しいから。」
「ありがとうございます。」
にこにこ。
周りにはそんなイメージがある彼ではあるけれど、私の前では寂しげに微笑みこそすれ笑うなんてことは無いに等しい。
そういう一面があることを知れて、惨いと思われるかもしれないが少し嬉しかったりする。
特に私にしか見せないところとか。
酷い女だな。私。
それともう一つ。
彼の秘密を見つけた。
「眼鏡、外してよ四ノ宮くん。」
「え、でも……」
「"彼"にだってもしかしたら悩みごととかあるかもしれない。平等に、しなきゃだめですよ。」
こくりと頷く彼のゆるいウェーブのかかった髪を避けて、眼鏡に手をかけそれを外す。
「こんにちは。もう一人の四ノ宮くん。」
目付きが鋭くなった。
「それ止めろ。」
「じゃあ砂月くん。」
「んだよ…」
「砂月くんは、七海さんを好きですか。」
怪訝な表情。
「毎回聞くな。…俺は那月を苦しめるあいつが苦手だ。」
「すみません。確認したかっただけです。」
不機嫌そうな眼鏡を外した彼は、威圧的な雰囲気で座っている四ノ宮くんの席の机に肘つく。
こんな雰囲気な彼を見れることは私にとっては嬉しいことである。
砂月くんも彼の一面だからだ。
「何ニヤニヤしてやがる。きもちわりぃ。」
「すみません、嬉しくて。」
「………那月の中から見て思ったが、お前は那月をどうしたい?何を考えているのかわからねぇ。那月を慰めたいだけじゃねぇんだろ。」
「愛したい、だけですよ。」
先程の答えに続き何を言っているのか分からないといったように見てくる。
再度、気持ち悪いと言われた。
それと、と続けられ、
「…最後に聞く。そろそろ、あいつがお前と話したそうにしてるからな。お前は苦しくないのか。」
「苦しいなんて思いません。痛いだけです。泥沼なんです。」
ふん、と鼻を鳴らして彼が眼鏡をかけるといつも通りの優しげな瞳。
「さっちゃんは、名字さんと話すときは静かみたいですね。」
「そうなんですか?いつもあんな感じかと…」
「いつもは暴れますから。」
くすり。
私も微笑んで、痛みの時間が始まる。
―*―*―*―
蛇足
なっちゃんはさっちゃんを認識していますが、さっちゃんの思いとか考えていることはわかりません。
さっちゃんには筒抜けですがwww
さっちゃーん!!(^q^)
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