【指先の毒】


嫌と連呼しても状況など変わる筈ない。何も変わらな い。

触れた指の感触を毒と見做され、毒を消すようにされる がまま。何度も何度も何度も嫌、嫌と応えるも止む気配 など見当たる見当もなかった。

「もう・・・っ、いやっ!はな・・・し・・・やぅ・・・!」

「全ての指が染まるまでだ。毒に犯されたこれが俺のモ ノで犯されるまでな。」

もうその指先、ひとつひとつは毒に犯されたものを拭っ たウルキオラの舌に纏わりついた唾液そのもの。指先、 爪先、指の間、手の平、手の甲、くまなく。

藍染に呼び出され、藍染の部屋内で起こった感触。ただ 信頼として織姫の手を握っただけ。何も信じることので きなかった織姫自身は自然と握り返していた。

その手の指先にまで仮に信頼された温もりという感触を 帯びて。

扉が開いていた部屋の外からその様子を窺っていたウル キオラの無垢な眼は見続けた。その寄せられた寂しい信 頼に僅かに応えた織姫に対し。

その様子から眼を離さなかった。いつも上から見下げる ように十刃を見下ろす藍染。その主が身分の低い人間の 同位置に。

ただ感じた。 いつも見下ろしている主が人間と。それは立場を同じに している。世話をして一番あの人間を支配している、の に何故か人間が高みにいるように感じた。

ただ思えた。 月しかないこの虚圏に高みの太陽が上がっていく姿。奪 われたような非望の中、現実の高みから引きずり堕とそ うと思った。握った指先にまで残った境界を消さなけれ ばならない、そう察知し盛られた毒を自身の毒に塗り替 えて引きずり堕とす決行をしただけ。

ただそれだけ。

握った片方の手だけを口内で舐め続ける。

部屋に戻された後握られた手首を放され体勢を失い、倒 れるように床に尻もちをついた。立ち直そうと片手をつ くともう片方を引っ張られ何も言わず織姫の手はウルキ オラの口内。

不快が奔る中、最初からやめてほしいと訴え懇願する中 止む気配は更々なく。

「やっ・・・汚いから・・・っ、いい加減はなして・・・ぁうっ!」

急に指先2本に歯が立った。痛みに片目をつむる。そし て見た。ウルキオラの顔を。

「・・・『汚い』、だと?」

揺れることすらないウルキオラの眼は苛立つ睨みの視線 を突き付けていた。
「女、今の自身の立場、解っているのか?」

背筋が凍る。

「今のお前に汚いと言える権限はない。俺はその他の熱 を帯びた『汚い』指先に俺の証を塗りつけているという のに・・・『汚い』とはな。」

触れた不快を消す為、全ての不快を拭い全てを自身の所 有物として核心させているモノを汚いと侮辱する織姫に 理性が消える。

「いやっ!放して!」

口内に含んだ指を奥に挿し込み、大きく舌で付け根や指 の間、指丸ごと再度舐め始めた。

「飽き足りない。これはもういい。」

「ひっ・・・やだ、やめ・・・っ!」

散々犯された手は解放された。が、ウルキオラはもう片 方の手を掴みくわえ込んだ。

毒を清らかにすれば新しくまた所有物を増やす。

またひとつ。そしてまた・・・ひとつ、と。

壊れた手はあなたの指示で動く



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