time bomb.











長月に入りながら遠退く筈の暑さが続く日々、明け方はやっと涼しくなったと歓喜する。
通いなれた歩道に見えた明るい髪色の少年を見つけ織姫が喜々として叫ぼうとした、否か。



「あ!?おはよう、くろ…っ!…んむっ?」



紡ごうとした名前を遮られ、ギクリと心音が高鳴る。
恐る恐ると見上げた先、炯炯としたウルキオラの瞳と織姫の視線がかちあう。
不服を込めた冷たい色。
無表情の顔に宿る、唯一、読める痛いほどの感情は何か。

その静かな怒りに織姫の弾んだ気持ちは畏縮する。
挨拶と言う日常の会話すら許してくれないのか。
視線を反らせばすでに少年の姿は無い。

織姫の眉尻が下がり、ようやく塞がれた口許からウルキオラの白い指先が動く。
解放される、と、緊張で入った織姫の肩から力が抜けた瞬間。
「ふっ…!?」


退かされる筈のウルキオラの指先が織姫の唇を悪戯になぞる。遊ぶような仕草で愛撫を奏で、織姫の表情はみるみる変化した。



それは合図だ、ウルキオラが織姫に宛てたシグナル。羞恥心が躯の奥から沸き上がる。夜の情事に伴う感覚、すっかり仕込まれた躯が小さく疼く。
無意識になる半開きのふくよかな唇。
白い指先が咥内へ侵入する。




「誰が、黒崎一護の名前を呼んで良いと言った?」






冷徹なまでの低音、その声にすら敏感に織姫は反応した。
彼女の淡い想い。
全霊で込められた少年の名前。嫌と言うほど、ウルキオラは知っている。
だから、その躯に教え込む。
指先ひとつで、あの少年を歯牙にもかけぬよう彼女の思考から追いやるように。



「わかっているな?」


「やっ…ウル、キオラっ!」



冷たい一言、ビクリと躯を震わせながら織姫は諦観する。

今日と言う休日は、ウルキオラの「お仕置き」で終わると言う事を。



――――――黒崎一護とは、ウルキオラに取っての時限爆弾だ。


FIN







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