普段はぽつりぽつりと道路に一定間隔に立つ電灯の明かりなどに意識はしなかったのだが、何故か今日は普段より明るい気がした。別に電灯だけでなくライトUPされた建物や住宅の明かり、月や星々の光までもがいつもより瞬いているのだ。

何故かは解っている。

今までは無人であった自宅に人が。しかも、一生を共にしようと誓った、愛しい妻が待っているから。


最寄り駅から歩き、学生時代から住んでいるマンションへ着いた俺はちらりと自宅を見る。
いつもは暗い部屋に明かりが点っている。
今までとは違う生活が待っているのを視覚で感じた瞬間だった。
俺はエレベーターを待つ気になれず、自宅のある4階までかけ上がり、息を整えることもせず鍵を開ける。ただいまと声を発すれば聴こえてくるソプラノ。ぱたぱたとスリッパがフローリングを叩く音がして、彼女は扉から現れた。



「お帰りなさい!お仕事お疲れ様!」



ふんわりと疲れを癒すような笑顔を振り撒いて玄関に現れた彼女は、間違いなく自分の妻で。
彼女が妻になるのはほんの数ヶ月前までは夢であったというのに、まさか現実になるだなんて思いもしなかった。


「…貴方?」


黙る俺を不思議に思ったのか織姫は顔を傾けながら俺の顔を覗き込む。その顔は若干不満そうで、俺は慌てて謝罪する。



「あ、ああ、済まない、考え事をしていた…」
「…もう!私がいる前で違うこと考える癖、寂しいから減らしてって言ってるのに…」
「済まない、…でも考えていたのはお前のことだ。まるで夢でも見ているのかと。」


憧れて、何度も想像した。
織姫が自分を出迎える場面。
笑顔で俺を迎えてくれる織姫。
そんな織姫を見て俺は思うのだ。

なんて幸せなんだろうと。





それをただ黙って聴いていた織姫は俺の言葉を聞いてゆっくりと近づき、俺を抱き締める。
突然の抱擁に俺は目を見開き、空いた手をあたふたさせる。
織姫はぎゅっと俺を抱き締めながら俺の胸元に顔を埋めて呟く。


「…そうだよね。夢じゃないんだよね…。」



このぬくもりがずっと傍にあるんだよね。



嬉しいと笑いながら顔を上げる織姫を見て、俺はまたもや年甲斐もなく顔を紅くし、そして思う。


やはり、織姫を好きになって良かったと。





生涯君に恋をする







「織姫…」
「…ん、なあに?」
「お前の可愛い姿見てたら興奮してきた…押し倒していいか?」
「…!?」






…終?



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