昔々在るところに、赤頭巾ちゃんがおりました。
名前は織姫といって、キャラメル色の髪、髪と同じ綺麗な色をした大きな瞳、桃色のふっくらした頬に、ぽってりした唇を持ちそれはそれはとても可愛らしい娘で、そして性格も優しかったこともあり、周りからとても愛されました。


ある日、そんな織姫は母から頼まれ事を受けました。
“病気で寝ているおばあちゃんのとこへお見舞いにいってちょうだい”と。
織姫は優しい子ですので、当然母親の言うことは一つ返事で了承し、お見舞いの品も持って、元気よく家を後にしました。


道すがら、織姫は綺麗なお花畑がある場所を見つけました。色とりどりの花が咲き誇り、織姫はとても感動しました。そこで、おばあちゃんにこのお花を持っていくことにしました。きっとおばあちゃんは喜ぶに違いないと、そう織姫は思ったからです。でも、一番の理由は、織姫自身がこのお花をいくつか摘みたかったのです。
だから、織姫はご機嫌な様子で歌いながら花を摘み取っていました。

そんな織姫をじっと、森の中で見つめている黒い影がありました。






森の樹の影で隠れていたのは狼―名前はウルキオラと言いました―で、じっと織姫を見つめておりました。
本当は食べるためにずっと隙を伺っていたのですが、楽しそうに花を摘んでいる姿を見て、どうやらこの狼は織姫に一目惚れをしたようでした。
しかし、ウルキオラはどうやら自分が織姫に一目惚れをしたことに気付いていないらしく、食べようと襲いかからない自分にあたふたしていました。



(なっ…なぜ襲いかからないのだろうか、お腹空いているのに…)


うう、とウルキオラはちらりと織姫を覗きます。その姿は、花に劣らない可愛らしい姿で。ウルキオラはほう、と息を洩らしてしまいます。


(……ってだからなんで俺は襲わないんだ!)


頭を抱えていたところに、あの、と可愛らしい声。
なんと先程まで花を摘んでいたはずの織姫がウルキオラの側までやってきていたのです。
流石のウルキオラも驚いて数歩下がります。



「こんなとこで何かあったんですか、狼さん。」
「いや、なんでもないんだ。本当に…」


“お前を食べようとしていた”とは言えず、更に襲いかかれずにいたとそんなカッコ悪いことも言えず、ウルキオラは言葉を濁します。
織姫はそんなウルキオラを見て、ごそごそと籠の中を漁り、一輪の花を取り出しました。そしてそれをウルキオラの耳に飾ってあげたのです。


「ふふ、お揃いですね!」


にこっと笑いながら織姫は自分の両耳の側に飾ってあるピンを指しました。それは水色で、先程ウルキオラに着けてあげたのも、水色の花でした。
ウルキオラはぽかんとした後、かあっと頬を染めます。直ぐ様織姫から顔を反らし、俯いてしまいました。


「…?どうしたんですか?」
「…ウルキオラだ。」
「え?」
「俺の名前だ。ウルキオラと呼べ。」
「ウルキオラさん…素敵な名前ですね!」


またもやにこっと微笑む織姫にウルキオラは益々顔を赤くさせます。そしてウルキオラは何か決心したように、目の色を変えました。
その様子は目の前にいた織姫にも手に取るように解ったので、声をかけようとしました。


「ウルキオラさん、何かありまし…きゃあ!」
「俺の主人に会わせる。」
「しゅ、主人?」
「俺が仕えている人だ。お前を紹介したい。」
「まっ待ってください!私おばあちゃんのとこ…っ」


ウルキオラはとても速く走り、織姫はひたすらぐいぐいと腕を引っ張られ、着いていくことしかできません。
本当はおばあちゃんの元へ行きたいのですが、この狼の必死に走る姿を見て、織姫は自分の腕を掴む手を振り払うことができません。
織姫は、まずはウルキオラさんの主人に会ってからおばあちゃんの元へ行くことにしました。



「ここだ。」



ウルキオラに連れてこられたのは、なんとおばあちゃんの家でした。織姫は目を見開きます。



「ここ、私のおばあちゃんの家だよ?」
「そうなのか?なら話は早い。」


ウルキオラは家のドアをノックし、失礼しますと一言述べて中に入ります。織姫も同様にこんにちは、と言いながら入りました。
入った先の、目の前のベッドにはあまり年のいかない人が本を読んでおりました。


「おばあちゃん、こんにちは!」
「やあ織姫、それにウルキオラ。遊びに来てくれたのかい?」
「はい、藍染様。…あ、いやあの、この女を紹介したいと思いまして…」


口隠るウルキオラを一目見、織姫にとっておばあちゃん、ウルキオラにとっては主人である藍染は、直ぐに察しました。
ウルキオラは織姫に恋をしたのだと。
しかし、織姫は優しい子ですが鈍感でもあるのでウルキオラの気持ちに全く気付いてないようです。
そんなあまりに対照的な二人を見て藍染はため息をつきまし

「おばあちゃん、疲れてるなら休んだほうがいいよ!」
「いや、疲れてはいないんだが、…まあ面白いと思って。」
「あっ藍染様!」


急にウルキオラが声を張り上げたので皆ウルキオラを見ます。ウルキオラはう、とつまらせながらも意を決したのか声を張り上げて言いました。


「俺…俺は…!


織姫を食いたいです!」








このウルキオラの一言で皆一瞬、固まってしまいました。
10秒後ようやく意味を理解した織姫はええ!?と慌てだし、ウルキオラは違うと否定し、藍染は何をしているんだとがっくりと頭を下げます。

そんな状況がめちゃくちゃになっている所に、何も知らない猟師がウルキオラを狙ってやって来たのです。


「ウルキオラ!今日という日はお前を倒しにきたぜ!」
「黒崎一護…今貴様はお呼びじゃない。下が…」
「黒崎君!」


ぱあ、と織姫が明るい顔をしたのを見てウルキオラは目を見開きます。


「おっ井上!悪い、今ウルキオラを倒さなきゃならねえんだ。危ないから下がってろ。」
「え?え?」
「黒崎一護…お前は空気が読めないのか!」


今俺が織姫に告白をしようとしていたのに、という独り言は誰にも聞こえません。
しかも、織姫の先程の笑顔を見てしまったせいで、ウルキオラは限界を越えていました。



「黒崎一護…今日という今日は必ず潰す…」
「望むところだ、かかって…」

「待って!」



戦いが開始されようとした瞬間、織姫が間に入ってきてしまいました。藍染が危ないから、という制止の言葉をかけますが、織姫には聞こえていません。



「黒崎君、ウルキオラさんは悪い人じゃないよ!」
「いや、人じゃなくて狼だよこいつ」
「お花さんが似合う人に悪い人なんていないよ!」
「……似合ってないだろ。」
「それに、…せっかく仲良くなったのに倒しちゃいやだよ…」


しゅんと沈む織姫を見て戦意を削がれるのは無理もありません。そんな織姫を見ていたウルキオラも同様です。


「ウルキオラさんも、どうか黒崎君を倒さないでくださいね。」
「………織姫が言うなら、倒さない。」


その一言で、織姫がぱあっと笑顔になりました。皆もそれを見て和んだのか直ぐに笑顔になりました。

こうして、皆仲良く幸せに暮らしたのでした。

終わり。








「………………なんだこれは。」
「え?私の作った赤頭巾ちゃんですよ!」
「……皆仲良く?あるわけない。」
「あるわけないと思うからせめて希望をこの物語に込めたんですよう。」
「それになんだ、俺が一目惚れをする展開になってるなんて…」
「……事実ですよね?」
「…………」
「あひゃ、頬をひっぱらないでくだひゃいよー!」



[*前] | [次#]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -