【鳴り響く愛と共に叶えて】





「織姫。」




まだ待ち合わせ時間より10分も早いというのに、ウルキオラはもう着いていて、私は慌てて駆け寄った。




「う、ウルキオラ、早いね!」
「そうか?」
「そうだよ!しかも私から無理矢理誘っておいて、私のほうが遅れちゃったし...」




今日のデートは私がウルキオラを誘ったもので、私が我儘を言ってこじつけた、いわば無理矢理なものだった。
ウルキオラは人混みが嫌いだから、遊園地も行きたがらない。
でも、私はどうしてもウルキオラと共にこの遊園地でしたいことがあった。
だから必死にお願いして、今日ウルキオラとこの遊園地に来たのだ。




「この遊園地は俺の家のほうが近いし、当然だ。」
「そうかなあ...」
「ほら、行くぞ。」




そうして、何気なく出された手をじっと見つめる。こんな風にウルキオラから手をだされるのは初めてだったから。




「...どうした。」
「な、なんか珍しいなって...普段しないから....」
「............」




そういってウルキオラもだんまりしてしまった。
多分ウルキオラも自然に手を出してしまったのだろう。
そんないつもなら見れない姿を見た私が顔を真っ赤にしたせいか、ウルキオラも少し頬を染めていた。
こほん、てウルキオラは咳き込んで目をそらしながら言った。




「...たまにはこんなことを自らするのも悪くないと思ったんだが、嫌か?」
「まっまさか!嬉しいよ!」




そういって差し出されたウルキオラの手をとり、指を絡める。
いつも帰りに手を繋ぐけれど、ウルキオラからということだけでこんなにも手が熱くなってしまう。
そんな変化を誤魔化したくてウルキオラに話しかける。




「ウルキオラからしてくれるなんておもわなかっただもん。」
「...それくらいできる。」




そう言うウルキオラをかわいいなあ、なんて思ってしまって、ついつい笑うのをこらえながら遊園地に入っていった。





*




それからあっという間だった。
今日は日曜日で混んでるからアトラクションの待ち時間で否応なしに時間が過ぎてしまうのはしょうがないことかもしれない。けれどそれ以上にウルキオラとこんなにも長い時間を2人だけで過ごしたことがないからか、



一分一秒が新鮮で大切で、そう思うと長い時間が大したことないように思えて、寧ろ乗り物よりももっと待ち時間があればいいのにと思ってしまった。




あれだけ眩しかった日も今は落ちて、空は暗くキラキラと星が煌めいている。



2人だけでいられる時間はもう終わりに近づいていた。




「そろそろ時間だな...」




ウルキオラが自分の腕時計を見て私に知らせる。



「そうだね...。」




さみしいけれど時間が時間なだけにもう我儘を言ってはいられない。
だけど、最後にウルキオラとしたいことがあった。



「...じゃあ最後に観覧車に乗ってもいい?景色が見たいし...」
「...ああ。分かった。」




そうしてゆっくりと観覧車へと向かう。
私の今日来た目的を果たすために。
















「わあ...!」





ライトアップされた建物は綺麗に夜空と共に輝いていた。
ここの遊園地には噴水広場もあり、この観覧車からその広場の全景を一望できるようになっている。広場の景観と綺麗な噴水に惚れ惚れと見惚れているとぐいっと手を引っ張られて互いに向き合った状態になった。




「どうしたのウルキオラ?」
「もうすぐ真上だ。しかもちょうどジャストだ。運がいいな。」
「.........っええ!?まさか、知って!?」
「...たまたまノイトラが言っていたのを思い出しただけだ。」



...そう、私がしたかったこと。
この観覧車の真上で1時間毎に鳴るベルのチャイムと共にジャストでキスをすると、そのカップルはずっと一緒にいられるというジンクスだ。ただタイミングを揃えるのは難しく、しかも最近はそのジンクスを知る人も減ってしまったらしい。



でも、それでもかけてみたかった。


ほんの少しでもいい。
私達がずっと一緒にいられるなら、たとえ信憑性が低くてもやっておきたいと思って、今回ここへやってきたのだ。

「...じゃあウルキオラは最初から私がここに来たがった理由を知っていたんだね。」
「初めから気づいた訳じゃないが...でも、お前があんなにせがんで行きたがるのは珍しいから、何かあると思った。」
「そっそんなにせがんでないよ!...我儘言ったけど。」
「いつも頼み事なんて言わないから余計に珍しく見えただけだ。...そろそろだ。」




時計もあと15秒で8時ジャスト。
私達が真上に来るのも、もう少しだ。




互いに向き合い、ウルキオラはじっと私を見、私も同じようにじっと見る。


数秒くらい見つめ合い、ゆっくりと瞼を閉じる。

そのまま自然と私達の唇は重なった。




それと同時に8時丁度のチャイムが園内に響き渡る。それは長くない時間だけど、何より深く繋がった瞬間でもあった。




鳴り終わると自然と私達はゆっくりと離れ、また互いに見つめ合う。




「.........叶うかな。」





私がぽつりとそう言うとウルキオラは景色を見ながら言った。




「自分達で叶えれば問題はないだろう。」




そう微笑んでいうウルキオラを見て、私はウルキオラに抱き付いてぎゅっと抱き締める。




さっきの言葉が嬉しくて、強く強く抱き締めた。



「おい、かなり揺れて...!」
「うん...叶えるよ。」
「...!」
「絶対叶える。」




もう、このぬくもりを失うことがないように。



またゆっくり目を閉じると再び口付けを交わした。







鳴り響く愛と共に叶えて





fin.



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