もうあの場所には戻れない
「ん…。」
眼が覚めた織姫は、ベットから上半身を起こし、前を布団で隠し鉄格子から見える月の光を見た。
(眼が覚めたけど、今は何時なんだろうな。)
連れてこられた此の場所で毎日を過ごしているが、毎日が夜の此の場所では、時間の感覚が今だよくわからない。
(…と言うより、わたしが此処に来てから、どれだけの時が経ったのかな…)
とても短いような…
長い時が過ぎたような気がする。
そして、わたしも此処で…
変わった…。
(みんな…元気かな…)
「何を考えている」
隣から声が聞こえた織姫は月を見ていた視線を、隣で眠っていたウルキオラへ振り返り向けた。
「此処に来てどれぐらい経ったのかな…って思って…」
「…現世の事を考えていたのか」
「っ!?」
確かに現世の事を…みんなの事を考えていた織姫驚いた。
「やはりな」
「どうして…わかったんですか?」
「お前の表情を見ればわかる」
「え?!」
慌てて織姫は両手で自身の顔に触れるが、もちろんわかるはずなどない。
「…帰りたいのか」
そんな織姫を、ベットから上半身を起こしたウルキオラは見つめ呟いた。
ウルキオラの真っ直ぐな視線を受け止め、織姫もウルキオラを見つめる。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「現世に…帰りたいかと聞かれたら…確かに現世には帰り「お前を現世に返すつもりなど無い」
織姫の言葉を最後までは聞かず、ウルキオラは織姫の言葉を消した。
「帰さん」
そして、ウルキオラは織姫の上半身を抱きしめた。
ウルキオラに抱きしめられながら、ゆっくりと織姫は言葉を紡ぐ。
「現世には…帰りたいです。
でも…貴方を…ウルキオラを置いてわたしは…帰れ…ないです」
織姫はゆっくりとウルキオラを抱きしめ返した。
(二人で願うのは、永久(とわ)に貴方と(お前と)…、永遠に共にありたい…と)