離れてゆく不安を感じた
「ウルキオラさん!ウルキオラさん♪」
俺の前を一人駆け出し歩いていた織姫が、俺の名を呼びながら、俺に振り返り手を振っている。
織姫が、どうしても外に行きたいと言ってきかなかった。
流石にしつこく言う織姫に、仕方なく俺は織姫を外に連れてきた。
藍染様の許可は随分と前にはとっていた。
織姫は外に出たいとは、前々から言ってはいたが、俺が外に連れ出した事は無かった。
外などに連れ出したところで、外には永遠に続く砂漠しかない。
織姫の気分転換などにはならないと、俺は決めつけていたが…
しかし、外に連れ出した瞬間に織姫は砂漠を走り出した。
その姿は…
まるで…
解放され自由になった…
鳥籠から飛び立ってゆく鳥のように…
俺は、そのまま此処に織姫が二度と戻ってなど来ないような感覚を感じた。
そんな事を考えている時に、振り返った織姫に名を呼ばれ我に返った。
俺に振り返った織姫の顔は、部屋の中で見ていた顔よりも明るく…
綺麗だ。
俺が何も答えず織姫を見つめていると、離れていた織姫が俺の元に走って来た。
俺の目の前まで戻って来た織姫は、不安そうな顔をしながら俺を見上げた。
「ウルキオラさん…どうかしたんですか?」
…どうか…だと?
「何故だ」
「なんだか…わたしを見ていたウルキオラさんの顔が…寂しそうに見えて…違ってたらすみません…。」
寂しそう…だと?
俺の顔は普段と変わらないはずだが…
「そんな顔を、俺はしていたのか」
「…はい。何か考え事でもしてたんですか?」
考え事…
「お前は…外に出れて、嬉しいか?」
「はい♪外を出た事がなかったですし…」
「…そうか」
「…どうしたんですか?」
尚も不安そうな、表情で織姫は俺を見ている。
さっき考えていた事を織姫に言うべきなのだろうか…。
「…織姫…お前が外に出た瞬間に走り出して行く後ろ姿を見ていたら、このまま俺の元を離れ、二度と戻って来ない気がした」
「…え?」
織姫が驚いた瞳を俺に向けたが、すぐに微笑をみせ、俺の手を掴んだ。
「大丈夫ですよ。わたしはいなくなりませんし、ウルキオラさんの元にちゃんと帰ってきますよ。一人で走り出してしまってすみません。わたしと一緒に歩いてくれますか?」
あぁ…。
温かい。
触れた織姫の手から温かさを感じ、さっきまで考えていた思考が消え、手から伝わる織姫の温かさに包まれ俺も離さぬように織姫の手を握った。
(一緒に手を繋いで歩けば、不安など感じないよね?)
(寂しい思いをさせて、ごめんなさい)