暴走!広報娘




日も傾きかけた頃、ETUのクラブハウスの一角は異様な熱気に包まれていた。
その一角、会議室の中では熱弁を奮う有里とその勢いに押される後藤。また、その他ETUのフロントの主要人物が勢揃いしていた。

「選手のトレカにレプリカユニフォーム。パッカくんの縫いぐるみやキーホルダー…オーソドックスな所は大体押さえてあると思うが…。」
「それじゃあ押しが足りないよ後藤さん。他のチームと同じじゃなくてやっぱり…こう、ETUオリジナル!っていうのがないと。」

バン!と有里が強く机を叩くとそれに呼応するかのように机の上に乱雑に置かれたETUのオフィシャルグッズ達が跳ねる。
机近くのホワイトボードには文字が重なって読みづらくなっているが『ETU新規オフィシャルグッズの製作について』と書かれていた。

「そういえば、どこかのチームが選手の抱き枕を作ったりしてたよね。ああいうの独自性があって良いと思わない?」
「…需要、あるのかな…。」
「じゃあ!後藤さんはどういうのが良いと思うの!?」

ずずいと有里に詰められて後藤は言葉に詰まる。しばらくの沈黙の末、彼がようやく絞り出した言葉は

「こういうのは…選手達にも聞いてみたらどうかな。参考程度に。」

であった。


………


「と、言うわけでお前ら何か良い案…無い?」

重たい瞼を擦りながら達海がそう選手達に告げたのはある日の練習が始まる前のミーティングの時間だった。

「いや、監督。話が見えないんスけど」
「なんかETUの新しいグッズを作ることになったから選手達からも意見を募りたいんだってさ。」
「そんなのクロの『黒田こけし』で十分だろ?」
「っていうか、あれ売れてないんでしょ?」
「んだと!?見慣れれば割と愛嬌ある顔してんだぞ!」

わいわいと賑わう選手達を余所にジーノが卵サンドを貪る達海の肩に手を置いた。

「ねぇタッツミー。僕思ったんだけどさ、パッカくん以外にもETUのマスコットっていると思うんだ。それをグッズにすれば良いんじゃないかな?」
「…マスコットって?そんな奴居たっけ」
「ねぇ、バッキー?」
「え…あ、は、はい!」

おろおろとしていたところに急に話を振られた椿は頭に?マークを浮かべつつ呼ばれた方を向く。視線の先には何時も通りの気障な笑みを浮かべたジーノと、面白い玩具を見つけた子供のような笑みを浮かべた達海が立っていた。

「ね、マスコットでしょ?」
「…あー、確かに。」


………


「はいこれ。椿君」

椿は困惑していた。

「永田さん、この縫いぐるみ…」
「先日出た案を元に作ったんだよ。この『忠犬バッキー』。本当良くできてるよね」

椿の腕に抱えられて居るのはただの犬の縫いぐるみ…ではなく大きなうるうるとした目がチャームポイントの犬の縫いぐるみにETUの七番椿のユニフォームが着せてあると言う物だった。
サンプルが出来てきたからと渡された物の、正直反応には困る。
 
「…でも私、正直不満なんだよね」
「そ、そうですよね!いくら何でも犬なんて」
「だって、もう少し目が大きい方が可愛いと思うんだよね。この縫いぐるみ!」
「………。」

椿に、最早返す言葉はなかった。



後日、有里の意見で少し目が大きくなったバッキーの縫いぐるみは馬鹿売れしたという。






2010/7/8/thu

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