リードは握ったままで
要するにヤンデレの椿に愛されて困っちゃうね★なジーノの話。
なにを思ったか椿がジーノを押し倒してるんで注意
貴方の心が移り気なことは分かってるんです
でも
それでも貴方の心は俺の元にあって欲しい
ただそれだけなんです
それだけだったはずなんです
なのにいつからだろう
それでは済まなくなったのは…。
「…バッキー?」
飼い犬に手を噛まれるというのはこういった時のことを言うのだろうか。
ジーノはそんなことをぼんやりと頭の片隅で考えながら自分の上に覆い被さっている男の顔を見る。
その顔のなんと真面目なことか。軽く冗談の一つでも言ってやり過ごすつもりであったジーノはその手は通じないのだと悟った。
思えば随分と思い切ったことをするものだ。普段の彼の事を知る者が今の光景を見れば何かの間違いだろうというに違いない。それ位ジーノにとって今の状況は予想外だったのだ。
「香水の…」
「うん?」
「香水の香りがするんです。何時ものとは違う…女の子が好んで付けそうな香り。」
ジーノの胸元に鼻先を近づけてすんと匂いを嗅ぐ。
彼のシャツから香る残り香は嗅ぎ慣れないもので、その事実がより一層椿を不愉快にさせた。甘い香りを漂わせた女はどんな表情でジーノの隣のいたのだろう。只、少なくとも今の椿のように戸惑いや嫉妬など様々な感情の入り混じった酷い顔ではないことは確かだった。
「俺、王子のことが好きで、好きで好きで好きで好きで好きで好きで仕方がないんです。だから、許せない。王子から俺の知らない匂いがする事が許せない。」
「なら、バッキーは僕にどうして欲しいの?【待て】の状態でいることに飽きたんだろう?」
「俺だけを見ていて下さい。王子の目にうつるのは俺だけで良い。それで、いつもみたいに甘い声でバッキーって呼んで欲しいんです」
ただそれだけなんです、と椿はどこか虚ろに笑う。チームメイトの前で見せるような笑みではなくて、何処かが歪んでしまった笑み。
「…いつからそんな笑い方をするようになったんだい、バッキー。僕の犬はそんな笑い方しなかった筈なんだけどね」
「するようにさせたのは貴方ですよ?王子」
あなたがおれさえみてくれたら、もうなにもいらない。
2010/10/5/the