二次元から来た彼女






!注意!

この先にはものすごく残念な赤崎さんしかいません。
まぁぶっちゃけますと
オタ赤崎×椿です。
でも椿は殆ど出てきません。

それでも良かったら















「一緒に帰りませんか?」

夕日が地平線に沈もうとしている時間帯。俺の事を待っていてくれたのだろう、目の前の彼女はそう言ってニッコリと微笑んだ。
…まぁ、残念な事にそんな彼女は平べったく熱を持たない画面の中にしか存在しないんだけど。


 →「いつもごめんな」
  「待たせたな」
  「余計な事すんな」


受けの良さそうな選択肢を選んでやれば彼女は嬉しそうに俺の手を掴む。(正しくは画面の中の主人公の手を握るスチルが見れる、だ)スチルの中の彼女は耳まで真っ赤になっていて、普段奥手な彼女が俺と手をつなぐのにどれ程の勇気を要したのだろうかと想像するのはとても容易かった。

「今度の休み、赤崎さんさえ良かったら遊びに行きませんか?」

思わずゲームのコントローラーを持ちながらガッツポーズを決める。自分のチームメイト達が俺のこんな姿を見たらどう思うだろう、なんて考えが一瞬頭をよぎる。がここは自室。鍵も掛かっているし、イヤホンをテレビに繋いでいるから声も漏れていないはず。なにより、この誘いを受けるまでどんなに苦労した事か!と胸に込み上げて来る熱いものが押さえられない。

「じゃあ、午後の一時にサッカーのスタジアムで。遅れないで来てくださいね!」

正直、ゲームを始めた当初はここまでハマるとは思わなかった。ゲームなんてするっていってもサッカーを題材にしたシュミレーションみたいなのばかりだし、ましてやテレビ画面に映る少女に告白をするなんて都市伝説みたいなもんだと思っていた。
何人かのヒロインと高校生活を通して親密になって行って卒業式の日に意中の少女に告白をする、そんな有り触れた感じのゲームなのにどうしてあの時手に取ろうと思ったのか。
でも、彼女との出会いを運んでくれたあの時の俺の判断は間違なく正解だ。

「明日は卒業式ですね。皆離れ離れになっちゃうの、寂しいなぁ…」

別れを寂しがる彼女に画面の中の俺が「また会えるさ」と声を掛けたところで携帯のアラームが鳴る。ふと壁に掛けられた時計を見ると盤上では長針と短針が0の文字の所で重なり合おうとしていた。名残惜しいけど明日の練習のことを考えると今日はこの辺で彼女とは別れなきゃいけない。あと残すところは卒業式の告白イベントのみとなったが、それは明日の楽しみとしておく。

電気を消し、もぞもぞと布団に潜り込んで明日の練習後に思いを馳せる。オフとなる時間までまだまだ先は長いが、瞼の裏には今お気に入りの彼女の笑顔がしっかりと焼き付いている。短く整えられた黒髪は艶やかで、大きな目は真っ直ぐに俺の方を見つめている。大人しく引っ込み思案だが、とても優しい。
ゆっくりと重い瞼を閉じれば、にっこりと彼女が微笑み掛けてくれた気がした。

・ ・ ・

次の日、俺は運命的な出会いをした。

「FC武蔵野から移籍して来ました。椿大介です。」

思わず手に持っていたタオルを落としてしまう。こんな時、どんな反応をしたら良いのか分からない。攻略本やサイトにだって、こう言う時の対処法は載ってない。
だって、昨日までは画面の中にいた彼女がすぐそこに立っている、なんて普通ありえないだろ!


…まぁ、目の前にいるのは男なんだけどさ。



止まれ!高鳴る鼓動 

2010/8/16/mon

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -