世良さんが来た!





拍手の再録です。


そういえば、達海さんと暮らす様になってから一つ劇的に変化したことがある。


それは

見えちゃいけないものが見える様になった…ということだった。


「まぁ、吸血鬼と住んでたらそういうこともあるかもね?」
「あるかもね?じゃないですよ!今朝も大変だったんですから…」

教室の中を徘徊する古めかしい服装をした見慣れない子供。道で擦れ違った足が見えない女性。道路脇に備えられた花束の近くに立つ半透明の男性。
今まで見えることなんか無かったのにどうしてこんなことになったんだろう…。おまけに俺が見えているのに気付くと着いて来ようとするし!

「あー…まぁ、でも、さ。家の中では見ないだろ」
「そう言われれば…確かに。外にはあんなにうようよいるのに中にはいないっスね」
「一応追い払ってるからねー。いたら困るだろ?お前苦手そうだし」

何故だろう。普段は俺の血を吸う以外何もしてくれないけど今は達海さんから後光が差して見える。

「本当っスか達海さん!」
「…あー…でもな、一匹だけどうしても払えなかったのがいるんだわ」
「!?」

ゴメンなー。とへらりと笑みを浮かべた達海さんが遠い。…どうしよう!そ、そんなに凶悪な幽霊がこの部屋に!?
よく今まで無事だったよ、とか今からでも引っ越しをするべきなのかな、とかそんな考えが頭の中を巡る。

「でもな、悪い奴じゃ無いから。」
「でも今だってこの部屋にいるんでしょう!?その幽霊が!」
「大丈夫大丈夫。そいつ非常勤だし。」

…非常勤?

「……非常勤っスか?幽霊が?」
「常にこの部屋にはいないんだ。正確に言えばこのアパート全体に憑いてる感じだな。それにさ…」

ドタドタと騒がしい足音。それは俺の部屋の前で止まり、ドアノブが回って戸が開くかと思えばその人物否幽霊は戸をすり抜けて部屋の中に入って来た。

「チュース、達海さん!おっ邪魔っしまーす!」
「おー、世良。入れ入れ」
「あれ、椿いるんだ?いつも出てんのに」

この人…が追い払えなかった幽霊、なのかな?なんか、考えていたのと大分違ってフレンドリーなんだけど…。それに俺の事知ってるみたいだし。

「…ってあれ、もしかして椿俺の事見えてる?マジで見えてる?」

自分のことを凝視されてる事に気付いたらしい。ゆっくりと首を縦に振ると世良、さん?はすげぇ!とか言いながら騒ぎ始めた。

「椿。一応紹介しておくと、コイツここの座敷童で世良恭平。…座敷童なんか追い出す訳にはいかないだろ?」

…それはそうですね。

「俺お前がここに住み始めてから一度話してみたかったんだよなー。よろしく!」
「よ、よろしくお願いします…。」

 


世良さんはいつもは堺さん(椿たちの部屋の二つ隣りに住んでる)の部屋にいます。

2010/7/18/sun


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