ふたり暮らし*2






「俺、もう学校行くんで戸締まりお願いします」
「オーケー」

行って来ます、と鞄を引っ掴んで玄関のスニーカーに足を突っ込む。オーケーなんて間の抜けた返事を返して来るのはついこの間同居をする事になった基居着かれる事になった達海さん。なんでも吸血鬼…らしい。
らしい、というか既に血を吸われた経験があるから只の人間では無いことは分かってるんだけど…。

「な、今日は遅くなんの?」
「バイトのシフトは入って無いんで買い物したらすぐ帰ります」

あぁ、そう。と布団を被ったままの達海さんの姿を見るとそんなことも忘れてしまいそうになる。もぞもぞと動く布団の塊を背に俺はドアノブに手を掛けた。


・・・


少しの間だけだけど達海さんと一緒に暮らして見て分かったことがある。

一つ目。達海さんは朝日が苦手だってこと。

朝、陽の光を取り入れようと思って部屋のカーテンを開けようとしたら鬼気迫る表情で止められたことは記憶に新しい。

「別にさ、俺元は人間だし朝日を浴びても灰にはならない訳。でも俺一応吸血鬼だし朝日は殊更眩しく感じるの。わかる?」

と真面目な顔で言われて、その日俺がバイトから帰って来るころには部屋のあらゆる所の窓は遮光のカーテンが取り付けられていた。


二つ目。達海さんがさっきみたいな質問をする時は達海さんが空腹になりつつある、ということ。

「別に血液以外でも腹は膨れるんだけどね、腹一杯食ったとは思えないんだな。」

三日くらい前に俺から血を吸った時に達海さんは言った。あんまり空腹になりすぎると血が欲しくて堪らなくなること。吸血鬼になってみると血液以外は何を食べても飲んでも味がしなくなっていたこと。表情は見えなかったけど、悲しそうな声だった。
吸血されて暫くはとてつもない疲労感に見舞われてまともに立つ事も出来ない。そんな俺に達海さんはポツリポツリと話してくれた。けれどどうして吸血鬼になったのか、とか過去の事に関してはどうしても教えてはくれない。


・・・


ふぅ、と軽く息を吐き梅雨の時期にしては珍しく晴れた空に思いを馳せる。

いつか、達海さんもこの空のように晴れやかな気持ちで笑える日が来るのだろうか?
  

2010/7/15/thu

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -