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今すぐ逃げたくなって体を捻ったら、後ろから抱きすくめられた。それと同時にうなじに濡れた唇が這う。

「や、やめろって。くすぐったいし」

仁科お得意のセクハラつきの冗談だと思って笑いながらもぞもぞと腕の中から抜け出そうとした。でも仁科はますます腕の力を強め、俺の腰の辺りに固いものを擦り付けてきた。
マジで冗談じゃない。でも酔ってるせいか抵抗する力も弱くなった。
別にこのままでもいいかなんて、甘い考えがよぎる。何故なら俺も仁科もタチで、そういったことの相性は悪いと思ってたから。
だから普段のキスのときに触られていてもそんなに気にならなかった。
せいぜい抜き合いするくらいか、それなら別にいいかな――なんて俺の貞操観念はちょっと緩いから、酒でいつもより三割増しゆるゆるの頭でそう思った。

ぼうっとしてる間に仁科の手は俺の服をはだけさせていた。耳元や、首筋、あらわになった肩に何度もキスを落とされる。
なんかこの感じ、懐かしいな。セックスなんてもうずっとしてなかったから。

上半身はうつ伏せで下半身は横になっているという中途半端な姿勢のまま、仁科のしたいようにさせた。
仁科は無言で俺の体をまさぐり、服を脱がせたところからキスをしていく。
キスしてない場所なんてないんじゃないかってくらい、全身キス責め。それを何故か嬉しく思ってしまった。
俺、変だ。酔いすぎておかしなことになってる。

「んっ……」

くすぐったさが癖になりそうなくらい気持ちが良くて、思わず声に出してしまうと、仁科は俺の唇にまたキスをしてきた。
俺はそれを受け入れて、自分から舌を絡めた。吸ったり唾液を絡め合うと息が苦しくなり自然と呼吸が荒くなる。
いつも余裕の態度でふわふわとしている仁科も、らしくなく息を荒げて俺に覆い被さって夢中でキスをしていた。
それが死ぬほど色っぽくて、雄の顔ってこういうのを言うんだなって初めて実感した。仁科様親衛隊のネコちゃんはこの魅力にやられてたわけか、と変なことが頭を過ぎる。

「……志賀ちゃん、何考えてるの?」
「なんでもねーよ……」

仁科はこんなときでも綺麗なツラをしていた。むしろ普段より今の方がより妖艶で、仁科の素っぽいなと思う。
性欲に支配された本能剥き出しの表情に思わず見惚れる。長い睫毛に縁取られた淡い色の瞳が濡れていた。
俺はもうこの行為をやめたいとは思わなかった。この先にある仁科の顔を知りたいと、馬鹿みたいな好奇心でいっぱいになる。

「……やめんの?」
「やめないよ」

密着している体はお互いに熱い。触れてるところから溶けているんじゃないかってくらいの熱さだ。
気がつけば俺はほとんど裸の状態で、仁科はまだ脱いですらいなかった。そんな趣味はなかったはずなのに、捕食されているようで興奮の度合いが増した。
それを知っているかのように仁科が再び俺を蹂躙しにかかる。

「あ、ちょ……待てって」

内股を探られたと思うとその中心に手が触れた。俺は恥ずかしいことにもうギンギンになっていて、何故かそれに対する言い訳を考えていた。
でもそんなのはすぐに吹っ飛んでしまう。仁科の手がゆっくりと擦り上げてきたからだ。

「あっ……あ、ん、あっ……」

自分でするのとは違うリズムで緩急つけて擦られ、変な声が止まらなかった。誰にされるよりも、仁科の手つきがダントツで上手い。
鈴口に滲んだ先走りを指先でくるくると広げられながら上下に擦られてすぐにイキそうになった。
なのに、それを察したように仁科の手がぴたりと動きを止める。射精感が遠のくと、また手コキが始まった。
それを何度も繰り返され、イキたいのにイケないという中途半端な状態が続いた。

「に、にしなぁ……」
「んー、なーに?」

しらばっくれたような白々しい返答に苛立つ。
その間も仁科の手は俺のチンコを握っていて、急所をがっつり掴まれた俺は気弱な気持ちになって情けない声を上げた。

「もーやだ……もうイキたい……」
「……理仁」

急に下の名前を呼ばれてドキリとする。
そうして一瞬の隙が出来たのを見計らったかのように仁科の手の動きが激しくなった。

「りひと……」
「あっ、あっ、そこ、気持ちいっ……仁科……」
「理仁……俺のこと、名前で呼んで?じゃないとイかせてあーげない」

意地の悪い言葉に目の前が真っ暗になった。
でも俺は性欲には逆らえなくて、仁科の手でイかせてもらわなきゃいけないんだっていう強迫めいた気持ちになっていたから、必死にその名を呼んだ。

「んっ、あっ、てんゆっ……天佑……天佑っ……」
「かわいーね理仁……」


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