5


背後から奥を突き上げてくる男のことをなるべく考えないようにしながら、早く、早く、終われ、終われ、とそれだけを念じていると、終わりはあっけないほどすぐにやってきた。
藤崎が大きく息を吐きながら一物を抜かないままに俺を強く抱きしめているところを見ると、ヤツは中に射精したらしい。

俺が睨みつけると、藤崎は汗まみれの顔で苦笑いした。

「……ご希望通りにしただろ?」

何が悪いのかという風に肩をすくめる藤崎に、純粋な殺意が湧く。

「……っ、最低だ、お前は……」
「最低で結構」

だって、と藤崎が荒い呼吸の合間に続ける。

「俺は、きみを愛してるから」
「…………」
「きみが他人の手に渡るより、憎まれても軽蔑されてでも繋ぎとめておくほうが何倍もいい。女になんて渡さない。他を見るなんて許さない」

罵倒したくても暑さと熱さで喉から声がうまく出ない。全身が燃えているみたいだ。汗でシャツがぴったりと体に張り付いているのがこの上なく気持ち悪い。

「もし――」

言いながら藤崎が自身を俺の中から引き出す。異物が抜け出して俺の緊張した全身が弛緩した。

「もしも、やり直すことができたら……」

それは藤崎の失言だったのだろうか。独り言のような呟きは蝉の鳴き声に埋もれ掻き消えた。




俺を支えながら藤崎は一人暮らしの自宅へと俺を誘った。俺は抵抗する気力も体力も根こそぎやられていたから従うほかなかった。

――こうしていつまでも藤崎のせいにしておけば俺が安心していられるのだと、藤崎は知っている。

俺はずっと流されていればいい。

そうするしかなかった。
そうするしかないと思っていた。

いくら考えても答えは出ない。
俺の中に燻る、このどうしようもない感情の着地点。


地面に落ちたスマホの画面には送信済みの文字。
いびつな伝言ゲームは俺の負け。




end.


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