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ステージは大成功したと思う。

みんなノリノリだったし、ていうか先輩を探そうと思ってステージ降りた途端に女の子達に囲まれちゃったし。
俺は先輩の感想が聞きたくて女の子達から必死に逃げた。

電話したんだけど、また全然出てくれない。
ライブの興奮もあって、俺はどうしても先輩に会いたかった。

先輩を探し回って、女の子達から逃げ回って、もしかして、と思って辿り着いた視聴覚室。
そこにはやっぱり先輩がいた。もういつもの制服に着替えて、セットした髪も半端に崩れていた。

俺の顔を見ると先輩はすごく驚いてて、まあこんな格好だから無理もないと思うんだけど、その様子に先輩がステージを見ててくれなかったことに気付いてがっくりとした。



先輩と一緒に机の下に隠れて話してると、やっぱり先輩といると嬉しいっつか、ドキドキするなって思った。

そしたらまた人の気配がして、見つかったかな、先輩との時間はもう終わりなのかな……と落胆していると、そうじゃなかった。

後夜祭を抜けてきたカップルがやりはじめたみたいだ。
まあ暗くて気分も盛り上がればエッチな雰囲気になる気持ちはわかる。

でもここには外野が二人もいるんですけどね、と思いながら先輩をちらりと見ると、俺はその姿に釘付けになった。

先輩は顔を真っ赤にして手で口を塞ぎ、体を小さくして机の隅に寄りかかっていた。
のけぞった首筋とか、汗の浮いたこめかみとか、必死で息を殺してる様子とか。そういうの全部もうエロくて俺は堪らない気持ちになった。

ていうか、人がセックスしてるのを見ただけでこんな風になるって純情すぎじゃね?
まあ最後までやる前に先生に見つかって出てったけど。……でも、俺はぎりぎりのところで張り詰めてた。

俺がじっとその様子を見てると、先輩がゆっくりと俺のほうを見た。
その潤んだ瞳と視線が絡んだら、もうダメだった――。

俺は、引き寄せられるように先輩の唇にキスをしていた。

湿った唇は驚くほど柔らかくて、熱くて、ぴったりと俺の唇と重なった。まるでそうするのが当然だったかのように。

一度じゃ物足りなくて、何度も何度も夢中でキスを重ねた。
先輩は抵抗しなかった。俺のキスをぎこちなく受け入れてくれて、それがまた胸が痛くなるほど嬉しくて思わず抱きしめた。

「紘人先輩……好き。大好き……」

その言葉は自然に出た。どうしても伝えたかった。
俺はキスをしながら先輩の手を握った。汗ばんだ熱い手は、俺の手を軽く握り返してくれた。

少し唇を離して熱い吐息を吐き出す。

そっと目を開けると先輩の震える睫毛が視界に入った。すごく近い。先輩の綺麗な顔がこんなに近くにある。写真を撮ったときより近く。
俺はまた先輩の唇を塞いだ。ついばむキスを繰り返す。少し深めに重ねると、先輩が震えた。

握った手を離して、俺は先輩の腕を撫でた。
だらりとして、この腕が俺を突っ撥ねることはなかった。

背中を撫でて細い腰に手を滑らせる。軽く抱き寄せてみれば、先輩は俺の腕の中に収まった。
先輩の手が俺の背中に回り、ぎゅっと服を掴む。

抱き合う形で何度も顎を入れ替えてキスをした。
好きだ。好きだよ先輩。そういう気持ちを込めて優しいキスを繰り返す。
先輩とのキスが気持ち良くて、たまらなくて、この甘美な時間をそうそう壊したくなかった。




唇を離して呼吸を整えてからまたキスをするっていうのを繰り返していたら、かなり時間が経っていた。
キスのし過ぎで唇が痺れるくらいだった。

俺はもう先輩と普通の関係には戻れなくて、ただこの人のことがほしかった。

なのに先輩はそんな俺を拒もうとした。離れようとした。
俺はそれが信じられなかった。でももう手放す気なんか一切なかったんだ――。






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