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衣装はバンドやってるハセ先輩に借りて、髪形は適当に自分で弄ることになっていた。
ハセ先輩、見た目はパンクなのにビジュアル系バンドやってるらしい。意外。

モノクロのアニマル柄の派手なタンクにレザーのジャケットとパンツ、シルバーのアクセをこれでもかってほどジャラジャラつける。
髪を横に流してうしろをツンツン立てると見事にそれっぽくなった。
メイクもするかとハセ先輩に聞かれたけど、どうせ汗で落ちるから軽くファンデ塗って白くするくらいに留めた。

俺はもともと髪色明るいから弄らなかったけど、他のメンバーは髪をスプレーで金や青に染めたりハーフウィッグでメッシュっぽいロン毛にしたり、ばっちりメイクでかなり気合が入ってた。
衣装も黒シャツ黒ジャケットにゴールドとか、ノースリーブで腕を出して包帯を巻いたりとか、みんな派手な黒づくめで勢ぞろいすると圧巻。

記念写真撮ろうぜってなると、上向きに顎を傾けたりナルシストっぽいポーズ取ったりしてみんなノリノリ。

一応練習はしたけど実際本番となるとすげー緊張する。

俺はメインボーカルで参戦だから責任重大。話し合ってるうちに押し付けられただけなんだけどね。
一年だったら失敗してもいいだろっていう体のいい人身御供だ。俺も楽しそうかもなんて気軽に引き受けたことを絶賛後悔中。

そりゃもう、ハセ先輩行きつけのライブスタジオを数分間借りさせてもらったり、カラオケに通ってボイトレしたりと涙ぐましい努力をしましたとも!
楽器担当はみんな経験者だったから問題なく形にはなったんだけど、俺は初心者中の初心者だからハセ先輩のバンドのボーカルさんに一から教えてもらった。

ちなみにダンサーさんたちは夏休み中に市民グラウンドでこっそり集まって練習したらしい。

外は雨だから出し物は全部体育館で行われることになっている。
俺らの前の出し物も結構盛り上がってて雰囲気はかなりいい。


そして来た俺たちの番。

小休憩のあと、プログラムは仮装コンテストになってるからステージの幕が引かれている。しかし幕の中ではせっせとバンドの機材が運ばれてセッティングされていた。
機材は前日の生徒会バンドのものをそのまま使わせてもらうことになってるから楽だった。

俺たちバンドはステージ上の端で演奏して、メインダンサー五人がステージ、残りのダンサー十数人はステージ下で踊る。っていうことになってる。

合図があって俺は身構えた。

司会進行役の子が次のプログラム紹介をする――その時を狙って俺は舞台袖から躍り出た。
戸惑う演技をする司会の子からマイクを奪うと、女子の黄色い声が聞こえた。しかし俺は今V系バンドのボーカル。変に愛想は振り撒かない。

「――ようこそ、俺たちの狂乱のエデンへ」

これ俺が考えた台詞じゃないからね!
V系バンドってどんなん?と適当に話し合ってバカ話で盛り上がってるときに思いついた台詞ですから!

いや、こういうのは恥ずかしがったら負けだ、と胸を張って余計にかっこつけると女子達の悲鳴が大きくなった。成功?成功だよね。
体育館が暗くなって、さっとステージの幕が開く。そこにはもうスタンバイしてるバンドメンバーとメインダンサー。

幕開けと同時にシンセの音で演奏が始まった。
ステージ前の開いたスペースにもダンサーが音楽に合わせて登場する。

俺もステージにかっこつけて上って、マイクスタンドの前に立った。なんかもう歓声がすごい。他の音が聞こえないくらい。

曲はV系バンドじゃなくて洋楽のカバーを二曲。俺もハセ先輩も好きなバンド。
有名バンドのオルタナロックなんだけど、ハセ先輩のバンドメンバーが初心者でも演りやすく、かつカッコイイアレンジをしてくれた。

もともとカラオケでよく歌ってるやつだから馴染みがあったんだけど、ハセ先輩に指導を受けつつかなりブラッシュアップしたと思う。
ラップ部分はもう一人のボーカルのやつと手分けして、俺は主にシャウト系のボーカル。ところどころ間違えたけど爆音でめっちゃ気持ちよかった。

たった五分間のステージ。この会場のどこかで先輩も見てくれてるかなと思うと気合が入った。





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