転機



そして文化祭二日目、運命の日がやってくる。



俺は今日午後の当番だから、先輩のクラスの出し物を見に行ける。
昨日ポンパにしてたらチャラいチャラい言われたけど、今日も前髪を同じように上げて編みこんだ。だって鉄板の側ってあっちーんだもん。

メール返ってこなかったのはショックだったけど、それくらいでへこたれる俺じゃない。
気合入れて先輩のクラスに行ってみれば、教室の外にまで人が溢れていた。

一体どうしちゃったの?そんなに人気なの?そういや昨日も午後にはチケット終了したって聞いてたけど。
教室を覗くとその理由が判明した。先輩のせいだ。

紘人先輩は、エプロンこそつけてなかったけどソムリエの衣装みたいなのを着て、くじ引き用の大きな箱を持って立っていた。

それがすげーのなんのって。
前髪は綺麗に横に流して後ろ髪を緩くまとめ、いつもの髪型より大人っぽい。
黒いベストがその細い腰を強調してて、細身のパンツのおかげで足の長さがよく分かる。びっくりするほどエロ格好いい。そりゃ人来ますわ……。

先輩は客寄せとしてこの教室に朝から配置されてるらしく、彼にしては珍しく笑顔を振り撒いていた。俺としてはそれが気に入らない。
先輩の笑顔は俺の特権みたいなもので……っていうのは勝手に俺が思い込んでるだけなんだけど、とにかく先輩が他の人にニコニコしてるのは嫌だった。

俺は先輩に特別扱いして欲しくて、わざと俺と他とは違うんだってアピールした。我ながら心狭い。
先輩とのツーショット写真を強請れば、彼もやれやれって笑いながら了承してくれた。マジ可愛い。

そうと決まればスタンプポイントをすぐに覚えて吉住たちを連れて教室を飛び出す。
ラリーなんか簡単だったけど、教室に戻ったら先輩はいなかった。

また逃げられた……と思ったけど単に便所に行ってるだけだった。
帰ってくるのを待っても全然来ないから、吉住たちは先にバスケ部の準備に戻っていった。
俺ももう行かないといけないんだけれど、電話してみても電源切れてるらしくて通じなかったからちょっと心配になった。

ただでさえ髪型と服装でいつもより美人度三割増しなんだから変なのに絡まれてるかもしれない……と、男子トイレをつぶさに覗いた。

でもどこにもいなくて絶望的な気分になってた頃、先輩は無事に見つかった。
展示をしてない教室近くの便所に行ってたらしい。

そんな先輩を捕まえて人のいない教室に連れ込む。
や、これはその……変なことするわけじゃなくてね?ただ約束を果たしてもらおうと思って。
下心も少々ありつつ、先輩を抱き寄せてカメラアプリでツーショットした。

つか、先輩の肩細い。そして超いい匂いする。頭に頬をくっつけてこれでもかってほどラブラブ写真を撮りまくった。

先輩も固まってたけど嫌がってはなかった。
だからつい調子に乗ってそのすべすべのほっぺにキスしちゃった。

なんとなくノリでやっちゃったけど、先輩の頬はふにっと柔らかくて少し冷たかった。その感触に感動していたら脛の痛い場所を蹴られた。うーんやりすぎた。

でもこのキス写真は俺の宝物になった。
目を閉じて唇を突き出してる俺と驚いたような可愛い顔の先輩。ちょっとブレてたけどそれが臨場感あって逆にいい。

怒らせちゃったかと思ったけど、俺とのツーショット写真を欲しいと言ってくれたから満更でもなかったのかもしれない、と単純な俺はまた舞い上がった。



バスケ部の模擬店に行くと遅刻で怒られた。でも俺は先輩とのチュー写真があるから全然屁でもない。
スマホを見てはニヤニヤしてる俺を吉住や勇大がキモイキモイって散々言ってくれた。
ツーショット写真見せろって言われたけど、俺はもったいなくて絶対に見せなかった。

フランクフルトは午前中にほとんどなくなっていたせいで午後の店番は早めに終わった。

もしかしたら先輩と残りの時間回れるかなーと思って電話してみたけど、出てくれなかった。ていうか、真田先輩と外でお茶してたらしい。
たまたま二人が校舎に戻ってきたところを見かけた実行委員のヤツが話してるのを聞いて落ち込んだ。

何か話があってそうしたみたいなんだけど、また真田先輩に嫉妬する。
でも、俺は後夜祭で先輩にカッコイイところを見せるという使命があるから気を取り直してライブに臨んだ。





prev / next

←main


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -