出会い
俺がその人を知ったのは、入学して間もない頃のことだった。
秋葉透――『あ』で出席番号一番になった俺はLHRでいきなり日直を申し付けられた。
担任に呼ばれて、出席番号二番の新木という女子と職員室に向かった。
「あたし番号一番にならなかったの初めて」
「俺は逆に一番以外になったことないよー?」
俺がそう言うと新木ちゃんはからからと陽気に笑った。ショートカットの彼女はあどけない笑顔が結構可愛い。
下の兄貴、慶輔の母校だっていうから猛勉強して入った進学校。
この辺りでは女子の制服が可愛いと評判で確かに目の保養。なんだか女子のレベルも高い気がする。中学ではわりと遊んでた俺のすけべ心がむくむくと膨らんだ。
俺は自分で言うのもなんだけど見た目はいい方だと思ってる。
亡くなった両親が美男美女だったらしく、僅かに残ってる生前の写真はたしかに俺とパーツが似ていた。
俺を引き取ってくれた養父母と似てないとは耳にたこができるほど言われた言葉。
小学校卒業するあたりから、年頃の男子らしく女子にモテたい一心で眉を整えたり髪型を工夫したり、ファッション誌で服を研究したりして、高校進学と同時に髪色も明るくした。
もともと体を動かすのが好きでミニバスをやっていたから身長は他のクラスメイトより高かったし、ちょっと大人っぽい格好をすると女子ウケは最高だった。
童貞卒業は中一の冬。高校生のお姉さんだった。
最初はとにかく必死でそんなに気持ちいいって感じじゃなかったけど、三回目あたりでセックスの良さに気付いた。
そうなったらもうダメ。性欲旺盛な年頃なのも手伝って色んな女の子のこと試してみたいって好奇心で、言い寄ってくる子来るもの拒まずって感じでヤリまくった。
向こうもエッチに興味があるから試してみたい、とか、俺の見た目とかに惹かれてやってみたいって子が多かったから好都合だった。
その辺は後から考えたらクズすぎて自分でも引くんだけど、当時はヤリたい盛りだったから仕方なかったんだよな。
とにかく、友達からはチャラ男とかエロメンの称号をいただいて高校進学した。
俺は楽しい高校生活の予感にとにかくうきうきとしていた。
新木ちゃんと中学どこだったー、何部だったーなんて世間話をしながら廊下を歩いていると、前方不注意で女子にぶつかってしまった。
「きゃっ……ごめんなさい!」
「あ、ごめんね。大丈夫?」
倒れそうになる女子を抱きとめたが、彼女が持っていたプリントは盛大に床にぶちまけられた。
「あああ〜やだぁ〜」
「あーいいよいいよ、俺拾うから」
ひょいひょいと落ちたプリントを拾っていくと、ふとぶつかった女子と目が合った。
めちゃめちゃカワイイ。
小顔にふわふわの長い髪、垂れた大きな目とふっくらしたピンクの唇。そして制服の上からでもわかる、でっかいおっぱい。
超美少女。俺のドストライク。
新木ちゃんもプリント拾いを手伝ってくれて、無事に全部回収して彼女に手渡した。
うわー手もちっちゃい。
「俺ちゃんと前見てなくてごめんねー」
「大丈夫。拾ってくれてありがとう」
彼女がふにゃ、と笑うと口元にえくぼができて八重歯がのぞく。それがすっごく可愛い。俺も得意のキメ顔で笑った。
――まあ結論から言うとこの子が俺の高校生活初めての彼女、陽菜だった。
隣のクラスで合同体育とかしたときに話して仲良くなって、すぐ付き合うことになるんだけど。
とにかくその場は新木ちゃんに「気をつけなよー」って笑われながら改めて職員室へ向かったのだった。
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