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静かに告白されるのを聞いていると、キスしているときよりもよっぽど胸がドキドキとした。

「それで……何の話だっけ……あーもういいや、とにかく俺、ずっと紘人のこと好きで好きでしょうがなかったの。だから俺、今すげー幸せ」
「……瑞葉とは、付き合ってない」

ぽつりと言うと、透が息を呑んだ音がした。

「好きだった……のは本当だが、付き合わなかった」
「どーして?」
「瑞葉より気になる人ができたから」
「それって……」
「きみのせいだ」

やけくそ気味に言うと、透が苦笑した。

「え、俺のせい?そこは俺のこと愛しちゃったからって言ってよー」
「愛しちゃったから」
「感情がこもってないー」

可笑しそうに笑う透を真正面に見つめて、僕はそっと口を開いた。

「透、好きだ」

僕がそう言うと透の表情がはっとしたように神妙になる。そして彼は耳まで真っ赤になった。

「……もー不意打ち。てか、イライラしてた俺がバカみたいじゃん」
「イライラって」
「だからさぁ、ほら、俺ばっかり紘人のこと好きみたいだったじゃん。付き合っても好きとか一言も言ってくれないし、デートしてても上の空だし。紘人クールだから全然そういうのわかんなくて」
「さっきから人のことをクールって言ってるが、別に僕はそんなつもりはない」

むしろ透には振り回されてばかりで格好悪いくらいだ。
それなのに冷静に見えたと言うのだろうか。

「僕はあまり感情が表に出ないからそう見えたのかもしれない」
「そーなんだ。でもそういう落ち着いたとこも俺好きよ?動じなくてカッコイイよね。知ってる?紘人ってクールな王子様ってみんなに評判なの」
「それは過大評価に過ぎる……」
「うん。あんたが本当は恥ずかしがり屋で可愛いのは、俺だけが知ってればいーの」

ちゅ、と頬に透の柔らかい唇が触れる。そういうことを臆面もなくやってのける透こそ王子様だ。

それから僕たちは離れていた間のことを報告し合い、甘い時を過ごした。







一週間後、眼鏡の男が逮捕されたと聞いた。
男は企画会社の会社員で、高校の近所をうろついていた所で職務質問を受けたらしい。

以前にも同じように少年にストーカー行為を働き、警告を受けていたそうだ。それが警察に記録として残っており、今回のことで余罪が明らかとなってお縄になったとのことだ。

脅迫の末のわいせつ行為など、被害者が「同性だから知られたくない」と泣き寝入りしていた案件もかなりあるらしく、厳しく取り締まってくれるとのことだった。

僕と透、それから長谷川はその吉報に一安心した。
これでようやく平和な日常が戻る。







透と出会わなければ瑞葉との未来もあっただろう。あるいは僕はこんな幸福を知らないままだったかもしれない。

でも僕は彼と出会い、自分の意思で『今』を選んだ。


あの日、視聴覚室のドアを開けて出会った僕たち。これからたくさんの試練も悲しみもあるだろう。

でも僕は、透との二人の未来を歩んでいく。






後編 END







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