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それから四日後、本日からテスト期間だ。
中間テストのあとに間を置かず実力テストがあるので結構忙しい。

この期間から放課後の部活動は休止なので、テスト勉強を一時間したあと、僕と透は一緒に帰る約束をしていた。

校門の側で落ち合ってゆっくりと駅に向かう。
僕の家は反対方向なのだが、どうせ自転車だし透と少しでも一緒にいたかったのでそうした。たった十五分だけれど。

途中それぞれの顔見知りに声をかけられたり驚かれたりしたが、僕達が二人でいることには何も言われなかった。
二階堂に聞いたのだが僕と透の仲がいいことは妙なことになんとなく生徒間で通ってるらしい。

仲良くなった経緯は僕だって説明しづらいが、透がうまく説明してくれたようなので余計なことは言わないようにしている。透の明るい性格が幸いしているのかもしれない。
愛嬌のある彼にかかればおかしなことでも許されるような空気になるらしい。

「ねー先輩、明日デートしよ、デート」
「テスト前だってわかって言ってるか?」
「えーだって昼以外全然会えないじゃん?先輩不足で俺死にそう。お茶しながらだらだら喋るだけでいいからさー。休みの日も先輩に会いたい」

大げさに嘆く透に冷ややかな視線を送る。
とはいえ、たしかにテスト期間中だからといって学年の違う僕達が一緒にテスト勉強をするというのも変だ。というより効率が悪い。

「……まあ少し会うくらいなら」
「ほんと?」
「な、なんなら僕の家に来てもいいが」

小声でそう言うと、透は驚いたように目を瞠った。

「うーん……それはいいや。じゃあ明日の昼過ぎにさ、ちょびっと遠くのマック行こ?この辺知り合いばっかで面倒だし」

さらりと流された僕の提案に少なからずショックを受ける。
僕の家なら……まあ散らかってはいるがゆっくりできるし透なら二つ返事で頷くかと思ったのだがそうじゃなかった。

駅で待ち合わせして、時間はこれくらいで、と透がどんどん決めていくのを僕は頷くことしかできなかった。



そして土曜日、曇ってはいたが雨は降らないと予報で言っていたので手ぶらで出かけた。
駅につくと透はまだ来ていなかった。

先週待ち合わせした場所と同じ壁の前で透を待つ。
メールを確認すると透から『ごめん十分くらい遅れれ』と焦ったような誤字のメールが届いていた。

ぼんやりと曇った空を見上げる。すると、見覚えのある二人連れが僕の視界に入った。
そちらも僕に気付いて手を振ってきた。目が合っては無視するのも気が引けたのだろう。

「あ、ひろ君!」
「瑞葉……と立花先輩」

瑞葉と立花先輩が私服姿で並んで歩いていた。どう見てもデートのようだ。
先輩に会釈をすると先輩の方も律儀に返してくる。
彼女は照れ笑いをしながら早口で僕にまくしたててきた。

「あっあのね、これから図書館で先輩と勉強会なの!ほら、先輩成績いいし去年のテストの過去問とか詳しいから教えてくれるっていって、それでね――」
「うん、そうか。それは心強いな」
「えっと……あの、ひろ君は今日どうしたの?」
「人と待ち合わせしてるんだ」

そう言って微笑むと、瑞葉もホッとしたように笑った。
僕もデートだ、とは言えなかったが。

じゃあね、と瑞葉と立花先輩が背を向ける。
本当にお似合いの二人だ。立花先輩は寡黙だが誠実そうで、時々暴走しがちの瑞葉をうまく導いてくれるだろう。

再び待っていると、今度はあまり会いたくない人物に会ってしまった。
天羽君だ。

僕は彼に嫌われているから声をかけない方がいいと思って、彼に気付いてない振りをした。
ところが彼の方から僕に近づいてきた。

「……どうも、先輩」
「……こんにちは」

空気が重苦しい。何故話しかけてきたのだろうか。

「透くんとデートですか?」
「……!い、いや」
「隠さなくていいですよ。僕、知ってますから」

知ってる?知ってるとは、何を?
混乱しながら天羽君をただ見つめていると、彼は綺麗な笑みを浮かべた。

「なんでこんな人……透くんって趣味悪い」

見惚れるほどの無邪気な笑みとは裏腹のはっきりとした悪意を持った言い方に、僕の気持ちが沈む。

「透くん、うまいですよね。優しいし」
「は?何が……」
「さあ?」

言いながらぺろりと唇を舐める天羽君はひどく扇情的だった。
したくもない想像が脳裏を掠める。

「どうせ先輩は遊びなんですから、さっさと手を切ってくださいね」

目の前が真っ暗になったような気がした。





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