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翌日、さっそく制服を着て出かけた。私服だと体育館に入れてもらえないようなので、久々の制服だ。
手には旅先で買ってきた土産物。瑞葉にも買ったレモンカードの瓶と母の実家で代々飲まれているオリジナルブレンド茶葉。

透の顔を見るのは久しぶりで少し緊張する。ドキドキしながら校門をくぐった。


体育館は練習試合のときのような喧騒はなかった。顧問と部員同士の叱咤激励が響いている。
コートは中央を網で仕切られており、半分はバスケ部、もう半分はバレー部が使用していた。
でも見学の女子は結構多くて、小声で友人同士話したり応援したりしている。どこで見ればいいのかとうろうろしていると、透がさっそく僕を見つけた。

「紘人先輩!」

大声で呼ばれてビクッとする。周囲の目が僕に向いて頬が熱くなった。

「マジで来てくれたんだ?うれしー。あ、久しぶり?」
「いや、うん……というか、どこで見てればいい?」
「コートの外だとボール飛んで来るから上でお願い」
「わかった。ありがとう」

そそくさとその場を離れようとしたが、すぐに叱責が飛んできた。

「おいコラ透!さっさとコート戻れ!」
「はいすんません!じゃあ先輩、またあとでね?」

手を振って練習に戻る透を見送って、さっさと指示されたギャラリーに登る。コート全体が見渡せてちょうどいい立ち見席だ。

透はフォワードだと言っていた。中学からそのポジションで副部長も勤めていたのだとか。
まだ一年だから本大会ではサブだが、練習試合ではスタメンで使ってもらえることもあるらしい。

それを聞いただけでもすごいとしか言いようがないし、こうして見ていると、全体のムードメーカーになっているようだ。
そんな透のことを僕自身のことではないのに誇らしく思った。

練習は基礎練習を繰り返しと、最後に模擬試合をやっていた。見ていて思ったのだが、部長の立花先輩は堅実なプレーをする人だなと思った。
透は遊撃手でコートを縦横無尽に走り回るが、立花先輩はゴール下で根を張り、ぶつかり合いをものともせず取りこぼしたボールをすかさず奪っていく。

こうして選手ごとに見ていくと、バスケというスポーツがいかに面白いものかがわかる。他の選手の名前を知らないのが惜しい。今度透に教えてもらおう。
瑞葉が言っていたがたしかに男前が多いような気がした。まるでアイドルグループのようで、これでは人気が出るはずだ。

ぼんやり見ていると終わりの挨拶が体育館に響き渡った。午後は別の部活が使うらしい。
部室で反省会や着替えがあるようなので、体育館の外で待つことにする。
バスケ部目当ての女子達も一斉に帰り支度を始めた。



体育館の中も暑かったが、外もそれ以上に暑い。風が通るだけましかという程度で、蒸し焼きにされているようだ。こういうときはイギリスの方が気温が低い分過ごしやすい。

木陰の花壇に座って待っていると、ふっと手元が翳った。
透がもう来たのかと思って見上げると、それは面識のない男子生徒だった。しかしその顔だけは見たことがある。

バスケ部のマネージャーで、美少年の一年の子だ。透に聞いたが、確か天羽君とかいったか。
僕は軽く会釈をしたが、どうやら彼は僕に用があるらしく目の前を塞いでいる。ずっと座っているのは失礼かと思って立ち上がるが、彼は僕より少し背が低く、華奢だった。

「……あの、何か?」

じろじろとこちらをねめつけてくる視線を不愉快に思いつつも、知らない人なので穏やかに話しかける。
彼は僕に向かって鼻で笑った。その態度にショックを受ける。僕の何が気に障ったというのだろう。




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