15


「透……とおる……っ」

急に心細くなって彼の名前を呼んだ。
僕が傷つかないように解してくれているだけなのに、もの寂しく、肌寒く感じた。すぐそこにいるのに遠く思える。
何故だろう――透と離れていたくない。
今日の思いがけない再会で、わずかでも揺らいだ自分の心が怖くなったせいかもしれない。

わけもなく泣きそうになっていると、透に腕を引かれた。
上体を起こし向かい合って座り込んだら、彼は僕に宥めるようなキスをくれた。

「ね、できるかどーかわかんないけど、今日は違う体位でやってみない?」
「え……?」

どういうことかと透を見やる。
彼は緩くあぐらをかいてスキンを被せたあと、僕の腰に手を置いた。そのまま引き寄せられる。

「俺んとこに跨って……そうそう、んで、腰下ろして」
「こ、こう、か?」

座り込む透に膝立ちで跨る。不安定な体勢をどうにかしようと透の肩に手を置いた。
こわごわ腰を落としていくと、透のペニスの先端が窄まりに触れた。彼は腰を前後に揺らして、ローションをぬるぬるとそこに塗りつけた。

「このまま挿れられる?」
「ん、うん……やってみる、んっ……!」

早く繋がりたい一心で思いきって下半身を沈める。なのに、自分でやろうとすると挿入が難しいということを知った。
体は恋人を欲している、けれど最初の衝撃を思うとなかなか先に進めない。先端がめり込んだと思ったら同じ分だけ腰が引けてしまう。優柔不断の悪い癖が、こんなときに出てくるなんて――。
進退定まらずに呼吸だけが浅く乱れていく。いつも透が、いかに上手にやってくれていたのかを痛感した。

「紘人……もーちょい、頑張って」
「と、透……ぅ、く、僕……っう」

困り果てて首を振ると、透は軽くキスをしてから僕の臀部を掴んだ。
そうされた瞬間、先の太い部分がぬるりと潜りこんだ。痛みもなく案外あっさりと挿入できたことに驚く。
狭く閉じていた襞が広がり、熱く勃ち上がったものがずぶずぶと埋め込まれる。
下から奥まで分け入ってくる。痺れるような感覚が全身を駆け抜けた。

「あっ、あっぁ、こんな……あっ」
「ん……どう?苦しくない?俺はすっげー、きもちぃ、けど」
「だ、大丈夫、んッ」

息も切れぎれに返す。すると、透にぎゅっと抱き締められた。汗ばんだ体が張りつくくらいに密着すると、さっきまでの不安感は吹き飛んだ。

「はぁ……俺ね、今日はなんか、こーやってくっついてたい気分。はぐれちゃったせいかな?」
「僕も、同じことを、考えてた……」
「マジ?気が合うね」

透が嬉しそうに笑ったので、僕の口元も緩んだ。
そのまま抱き合って唇を重ねる。絡めた舌は熱く柔らかく、滴るほど濡れていた。
キスをしていたら力が抜けて、いっそう透に寄りかかるはめになった。そのぶん自分の重みで、挿入がさらに深くなる。
透にゆさゆさと揺さぶられる。そうされて、僕も懸命に腰を動かした。

いつもは折り重なるようにしていたから、抱き合う形でのセックスは今までとは違う気持ちになった。
ただ貪欲に追い求めるだけではなく、慈しむような、交じり合うような――。

「と、透……好きだ、きみが、きみだけが……」
「んっ……俺も、だよ」

上ずった声で伝えれば、掠れ声で返ってきた。
汗が流れ落ちていく。せわしなく息を吸い込むと果実の香りがした。
不意に、透の手が僕の背中を撫で上げた。くすぐったいその感触に全身が震えて、背をそらすと同時に透の昂りを締めつけた。

「あぁっ……っん!ぁ、んぅっ!」
「紘人ってけっこう、背中、んっ、好きだよね?」
「い、いや……好きとかどうか、わからな……あっ」

空いた隙間に透の手が伸び、僕のペニスがとらえられた。
緩く扱かれただけであっという間に限界まで膨れ上がる。彼の指先が先端を剥いてカウパー液を塗り広げた。そうされると男の悦びが僕を襲い、さらに露を溢れさせた。
自分でしてもここまでの反応はしない。透に――恋しい人の手でされるから、こんな恥知らずなことになってしまう。

「と、と、ぉる……っ」

僕の声に応える様子がなかったので焦点を合わせると、肌を艶かしく上気させた透の姿が目に映った。
荒い息遣いで行為に没頭しているさまが野生的だ。部活に真剣に打ち込んでいるときだってこれほどの顔は見せない。それを思うと、興奮で体の芯が痛いほど疼いた。

強すぎる感覚に耐えかねた僕は、透に縋るように抱きついた。
彼の肌から匂い立つ甘い香りに理性が侵されていく。
たまらない気持ちになって、熱い首筋に夢中で口付けた。キスだけでは物足りず、舌で味わったり吸い上げたりする。
そうしていたら透が喉の奥で笑った。

「すっげ、まじ可愛い……あーやばい……なんか、このまま、イっちゃいそ……」
「ぼ、僕も、んっ、いき、たい」
「一緒にイく?」

聞かれてこくこくと頷く。透に言われると、本当にそうできるような気がした。
すると透が僕の腰を両手で掴んだ。ズンと力強く突き上げられて、僕もそれに合わせて体を跳ねさせた。
アナルを下から突かれると、内壁の感じる場所を刺激される。そのたび波のように間断なく快感が押し寄せた。
勃起の裏筋を透の腹で擦れば、気持ちよさで頭がどうにかなりそうだった。

「もー俺、イきそ、紘人、んっ、いい?」
「ぅ、うん、あっ透、僕も、もうっ……あっ、あぁ……ッ」

苦しいほど高まった熱を解放しようと、透にしがみついて一心不乱に腰を揺らす。
技量も何もない。快楽と愛おしさだけでただ突き動かされている。
彼以外のことなど何も考えられないように。

「すげ、いい、あっ、やべ、もうイくっ……んんっ!」
「っあ!ぁあっ!」

透が僕の体をきつく抱き締めて体をビクビクと震わせた。
僕も必死に抱きつく。夜空に雪が舞うように、まぶたの裏が白く弾けた。
快感が極まるとペニスの奥から熱いものが一気に迫り上がった。内股が痙攣し、僕は、透の腹を白濁液で濡らした。


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