16


キスをしながら透の指が僕の腰をなぞり、シャツの隙間から入り込む。素肌に触れたその手は熱を持っていた。
両手が僕の背中を直に撫でる。くすぐるような掌の愛撫。けれどそうされて、くすぐったさよりも淫らな気持ちが上回った。

「ん……っ」
「言って」
「す、好き……すごく、好きだ……きみの、ことが……」
「……俺も、大好きだよ」

透の手が掴むようにして脇のあたりに滑る。そうして両の親指で僕の胸元を探った。親指の腹で乳首を優しく転がされて、びくんと腰が跳ねた。

「ぁ……っ」

思わず声が漏れてしまうと、透に小さく笑われた。

「先輩、敏感だね」
「あ、ちょ、ちょっと待て……あっ」

下にいる透を押し潰さないよう肘を支えに中途半端に体を浮かせているから、感じるように愛撫をされてはぐらぐらと揺れてしまう。
けれど彼は僕の制止などお構いなしに、指の腹でぐにぐにとしつこく左右の乳首を同時に刺激する。そこはすでに芯をもっていて、そうされると体の奥が甘く疼いた。

「んっ……待ってって言ってる、だろ」
「やだ」
「あっ、ちょっ……」

シャツを一気にたくし上げた透は、体をずらして僕の胸元に顔を埋めた。いじられて敏感になっている乳首が唇で挟まれる。軽く吸われ、そしてぬるりとそこに舌が這う。
僕は、肘をついた四つん這いのような不自由な体勢のまま、その愛撫に耐えた。
力が抜けてしまえば透を下敷きにしてしまう。起き上がろうにも彼が両手でしっかりと僕を固定しているからそれすら出来ない。

「ん、んぅ、ぁ……」
「……ねー先輩。月曜って体育なかったよね?」
「え?あ、ああ……」
「じゃ、キスマつけちゃお」

ぽつりと独りごちた透は、乳首のすぐ近くに唇をずらしてちゅう、と肌を吸った。そのまま数回、場所をかえて肌を吸い上げる。
痕をつけられるのは初めてではないけれど、しばらく残るそのしるしは恥ずかしく感じる。でも、透の存在をありありと思い出す陶酔感は癖になる。

「んー、下からだとつけにくいなぁ」
「透……」
「なに?」
「そ、それ……僕もやってみていいか」

そう言うと透は少し驚いたあと、だらしなく相好を崩した。

「えーなになに?俺にキスマつけたいの?」
「う、うん……。……あっ!いや、きみは部活で着替えたりするよな。や、やっぱりいい」
「大丈夫。つけていいよ」

もぞもぞと元の位置に戻った透は自らTシャツを捲り上げた。
逞しいというほどではないがほどよく筋肉の乗った綺麗な胸元が晒されて、生唾を飲み込んだ。

「あ、首がいい?どこでもいーけど」
「……そういえばやり方がわからない」
「キスして、そのままちゅーって吸えばいいんだよ」

簡単そうに言うが、透はどういうふうにやってただろうか。痕をつけられたことを思い出しながらそっと彼の胸に口付けた。言われたとおりに吸い上げる。
寒いのかくすぐったいのか、彼の肌は少し鳥肌立っていた。

「そんなんじゃ付かないって。もっと強く吸わなきゃ」
「……ん……」
「ほらほらもっと強……いたっ!イテテテ!先輩吸いすぎ!いやん優しくしてぇ」
「わ、悪い」

透がけらけらと笑いながら僕の肩を叩く。慌てて顔を上げると、真っ赤で痛そうな鬱血の痕ができていた。やりすぎたようだ。

「い、痛くしてすまなかった……」
「ちょっと大げさに言っただけだしそんな痛くないって。じゃあさ、慣れるまで俺で練習してよ」
「いや、ま、また今度にする」
「えー?いっぱいつけていいのに」

唇を尖らせて不満そうにする透。かわりに痛々しい鬱血痕に優しくキスを落とした。そのまま透の胸元を唇で愛撫する。
彼は少しくすぐったそうにしながらもうっとりとした吐息を吐いた。拙くもぎこちない僕の愛撫に感じてくれているのだと思うと、たまらないものがあった。

「あのさ、ここでもいいんだけど……ベッド行かない?」
「ん……」

透に促されて頷いた。起き上がってふわふわとした足取りでベッドの置いてある別室に二人で移動する。
けれど部屋に入った瞬間、愛撫に夢中になり浸ってぼんやりしていた頭が少し冷えた。寝室に暖房を入れるのをすっかり忘れていたのだった。
リビングの隣室だから冷えすぎてるわけではないが、服を脱ぐには寒すぎる。透も苦笑した。

「あ、あの……部屋暖めるのを忘れてた……」
「先輩ってほんと、結構抜けてるよねー」
「すまない……」
「責めてないって。――あっ、そうだ!部屋あったまるまで布団の中に一緒に入ってればいんじゃね?で、イチャイチャしてよーよ!ね?」

名案!とばかりに明るい声を上げながら僕を覗き込む。
ああ本当に、彼のこういうところが好きだ。いつも前向きで二人が楽しめる工夫をしてくれる。


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