17


叩きつけるように精液を全部吐き出して一息つくと、昂りが急激に醒めて自己嫌悪が襲ってきた。勢いの収まったチンコを引き抜いてのろのろ起き上がる。
紘人は上も脱いでない状態で、汗だくの顔を真っ赤に染めて荒く息を吐いている。
それを見てさあっと血の気が引いた。

「俺……水、持ってくるね」
「と、おる……?」

紘人のアナルから零れた精液やローションをティッシュで拭って、ジーンズと下着を穿き直してからベッドから下りた。
キッチンに逃げ込んでシンクでバシャバシャと顔と頭を洗う。

……俺、マジでサイテー。

冷静になって思い返してみれば紘人は一回もイってないし、自分だけが気持ちいい最悪なセックスだった。
強姦まがいに初めてやっちゃったあの日以来、二人とも気持ちよくなれるような優しいセックスを心がけてきた。それが全部台無しだ。
どうしよう、怒ってるかな。いや、これは怒られてもしょうがない。

「透」

背後から声をかけられてビクッとした。
おそるおそる振り返ると、上は寝巻きのまま、下はパンツだけ穿いた状態の紘人が心配そうな顔をして立っていた。

「あ……紘人、体……その、大丈夫?」
「平気だ。でも……」
「――ごめん!」

俺が勢い良く謝ると、紘人が驚いた表情になった。

「マジでごめん……俺、ちょっと酒飲んで頭イっちゃってて……って言い訳だけど、でも、ひどいことしてごめん」
「あ、いや、……いいんだ、大丈夫だから」
「つか寝てて。い、痛いでしょ、色々……もしかしたらどこか傷になってるかもだし」

こんな情けない顔を見られたくなくて、紘人の蔑む視線を見たくなくて、そう言った。
でも紘人は距離を詰めて俺の手首をぎゅうっと強く掴んだ。

「……きみがまた、いなくなったらと、思って……」

その言葉が指してるのは、たぶん初めてやったあと俺が逃げたときのことだ。
不安げなその声音にますます罪悪感が募る。

「……あのさ……」
「なんだ」
「すっげー心狭いこと言っていい?」

紘人が頷くところを横目で見てから、シンクの縁に額を押し付けてもたれかかった。

「最近さ、紘人、なんか俺にそっけないよ」
「え?」
「レポートちゃんと見てくんないし、話してても上の空だし、エッチすんのあからさまに避けるし。今日もさぁ、帰ってきたらさっさと寝てるし」
「…………」
「俺のこと飽きちゃった?」

眉尻を下げて首を振る紘人。弁解を聞くのが怖くて早口に次の言葉を重ねる。

「それに先々週、あんた友達の結婚祝いで出かけたじゃん」
「……ああ」
「それってほんとは真田……さんと会ってたの」

聞きながら、これで肯定されたらどうしようと気弱になる。
だってあいつは紘人のことが好きなんだよ。それなのに二人で……もしかしたらあいつの家で会ってたなんて聞かされたら、もう、今の精神状態じゃ冷静でいられない。

「……会ったが、結婚祝いの席でだ。言っただろう、高校時代の集まりだって。司狼は部活は違うが生徒会の関係で件の友人と交友関係があってな」
「じゃ、なにあの電話」
「電話?……ああさっきのか。あの日は三次会までやって、最終的に司狼の自宅で飲んだんだ。もちろん他の友人もいる中でな」
「……で?」
「それで、そのときにハンカチを忘れてきたらしくてな。取りに行くのが面倒だから処分してくれと言ったんだが、だったら僕の家に行くってうるさくて」
「そんなの、あいつが紘人と会うための口実でしょ……つか、俺がいるときならここ呼んだっていいし……」

紘人が口を噤んで俺を掴んでいた手を放した。
シンクから顔を上げたら意気消沈した表情が目に入った。

「なに、二人で会いたかったわけ?」
「ち、違う!そうじゃなくて……あの、ちゃんと説明するから、聞いてくれるか?」
「……うん」


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