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それから二週間――。

紘人がなんだかそっけない。
そっけないっていうか、遠慮がちっていうか。俺に対する態度が心なしかぎこちなくて表情がやけに硬い……ような気がする。
俺の気にしすぎっていえばそうかもしれないけど、紘人を愛しちゃってますからね、そんなちょっとしたことが気になるわけだ。

あと、ここのところほとんどエロいことをしてない。やんわり回避されてるっていうのか、そういう雰囲気になりにくい。
軽い触り合いだけでも楽しいし気持ちいいからそれはそれでいいんだけど、最中の紘人がどこか上の空に思えて仕方がない。

あれ、もしかしてこれ倦怠期のはじまり?むしろ飽きられてる?

日曜の夜、仕事に行ってる紘人の帰りを家で待ちながら悶々とした焦りを感じていたら、モデル仲間の勇大からラインでメッセが来た。
『いつめんで飲んでるからとーるちゃんもおいでよ』という誘い。
気分転換にちょうどいいかと思ってオッケーして紘人にもメールしたら数分もしないうちに了承の返事があったから、軽くシャワーを浴びて出かける準備をした。

馴染みのクラブで飲んでるのかと思ったら普通の居酒屋にいるって勇大からメッセが入った。そして指定された店に到着した途端、俺は一瞬固まってしまった。
いつメンっていうから男だらけのバカ騒ぎなんだろうなぁと気を抜いてたのに、同系列雑誌で見たことある読モ女子までいるし。そしてもっと驚いたことに天羽君も同席中だった。
適当に愛想良くみんなに挨拶してから、勇大にこっそりと耳打ちした。

「勇大……これ、どういうことかなー?」
「えぇ〜とーるちゃんは付き合ってる人いるってちゃんと言ってあるよん。でも呼べ呼べって女子がうるさいからぁ。天羽君もとーるちゃんいないと女子達怖いって言うしー」
「お前いつの間に天羽君と仲良くなったの?」
「え〜この前アド交換してからなんとなく〜?」

天羽君をちらりと見たところ、今日は女の子がいるおかげかちゃんとノンアルコールみたいで安心した。女子会御用達って感じのライトな居酒屋だから周りもノンアルコールや軽いカクテルばっかりだし。
そんな彼女らは新顔の天羽君に夢中だ。
こういう集まり大好きな一郎さんがいないのがちょっと意外だった。どうせ今頃ユキさんとデートでもしてるんだろうな。

飲み物を注文したあとに近くにいた女の子と喋ってるうちに、気がついたら隣に天羽君が移動してきていた。

「トオルさん、こんばんは」
「うん?あー久しぶり……ってほどでもないか」
「この間はすみません。色々と、ありがとうございました」
「はは、いいよ。今日は潰れないようにねぇ」
「大丈夫です。この前ので懲りましたから、ちゃんと自分で注文したのしか飲んでませんよ」

ほら、と天羽君が自分のグラスを掲げてみせる。どうやら炭酸のグレープジュースみたいだ。

「うん、えらいえらい」
「あ、僕のこと子供扱いしてません?」
「未成年は子供ですー」
「え〜僕とトオルさん、そんな変わらないじゃないですか」
「十代と二十代には大きな溝があるんですー」

天羽君を軽くからかってたら、女の子が会話に割って入ってきた。何度か飲み会で話したことがある顔見知りの子だ。

「トオル君、今日の主役を独り占めしてないでよぉ」
「あ、なに。天羽君中心の集まりなの?これ」
「有望な新人君見たい?って勇大から連絡来たから集まったの。あ、そういえばトオル君新しいカノジョ出来たんだって?」
「まーね。だから合コン誘わないでね。俺の可愛い人がヤキモチ焼いちゃうから」
「キミって軽そうなのにそういうとこ一途だよね〜。でもトオル君、なんかいっつもフラれてない?」
「そうなんですか?」

そんなとこ食いついてこないで天羽君。
すげー修羅場ってのは経験したことないけど、相手のほうから別れを切り出されることが多いのは本当だから苦笑いしか出てこない。


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