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透にさっきまでの余裕の笑みはなかった。
ローションと一緒に買ってきたのか彼は素早く薄いピンク色のスキンを被せて、先端を宛がってきた。
彼を受け入れるために下半身の力を抜く。けれどずぶりと固くて太いものが入ってくると、どうしても緊張してしまう。

「ん……ん……」
「紘人……すげー柔らかくなってる……」
「んあっ、あ、とお、る」

さっきまでとは比べ物にならないほどスムーズに挿入を果たす。
中にペニスが収まると、透は僕のうしろから覆いかぶさってきて耳元で大きく息を吐いた。
そうやって結合が馴染むまで待ってくれるのだが、この瞬間が僕は好きだった。すごく大事にされている感じがする。

「……あーもうヤバイ。紘人の中、ちょー気持ちいい……」
「う、ん……きみが、気持ちいいと、嬉しい……」
「そーゆー可愛いこと言わないで……またすぐイっちゃいそ……」

そう言うと、透は後ろからゆっくり僕を突いてきた。そうしながら僕の少し勢いをなくしたペニスを握り擦りあげる。
後ろと前の両方の刺激にたまらなくなってはしたなく声を上げた。

「あっあっあっ、あ、んっ」
「んっ、う、ヤバ、あんま締めないで……」
「わ、わかん、なっ……」

そう言われても加減が分からない。ただもう必死で、透から与えられる快感に何も考えられなくなった。
パン、パン、と肌がぶつかり合う音と、ぐちゅぐちゅという結合部から聞こえる摩擦音が僕の嬌声の合間にバスルームに響く。
透の腰使いは次第に遠慮がなくなり、僕も涎を垂らしながら喘いだ。ずんずんと突き上げられて痺れるような快感が僕を襲う。

僕は透の手の中で先に達してしまって、たらりと勢いのない射精をした。もう今日は何度絶頂を迎えたかわからないから精液も少ない。
浴槽にもたれかかっていると腰を抱え上げられ、更に激しい抽挿が始まった。

「あ、やっ、僕、イったばっか……!」
「ごめ、紘人、俺も、ダメだから」

強く揺さぶられて舌を噛みそうになりながら抵抗してみても無駄だった。透は僕の背中に何度も何度もキスをしながら腰を打ちつけた。
膝が浴室の固い床に擦れて痛いけれど、その痛みも快感にシフトしていくようだった。

「ん、あっあっ、あっ、とおるっ」
「イきそ、紘人、イク、俺……もー……」

そうして透が何度か僕の奥を穿って、やがて動きを止めた。スキン越しだからよく分からないけれど射精したみたいだった。
はっ、はっ、と荒く息を吐きながら透が僕に覆いかぶさってくる。後ろから顎を捉えられて、僕と透は不自由なキスをした。

「好き、大好き、紘人……」
「とお、る……僕、も……」
「好きだよ、すげー好き」

好き好きと何度も耳に吹き込まれてじわりと涙が滲んだ。
こんなに愛されていいのだろうか。透みたいな優しい人に、愛されて、僕はその価値があるんだろうか。

「……えっ、なに泣いてんの!?ごめん痛かった?つらい?」

慌てて透が僕の中からペニスを引き抜いて、正面からぎゅうっと抱きついてきた。
僕は必死に首を振った。ただ幸せすぎて胸が痛いだけなんだ。
失くした愛と、手に入れた恋と――不安定な気持ちが揺れる。

「……違う、大丈夫」
「そう?あの、ごめんね俺ヤリすぎだよね。紘人に負担かかるのわかってるんだけど……」

しゅんとする透がなんだか可愛くて、僕は彼の汗に濡れた髪を撫でた。セットされていない少し乱れた頭。

「大丈夫だ、透。僕はその、きみと、す、するの、嬉しいから……」
「……紘人!」

ますます力を込めて僕を抱きしめる透。擦れ合う素肌が気持ちいい。
僕が透の頬に少しキスをしたら、熱烈なキスを唇に返された。何度も吸われ、飽きるほど啄ばむ。
甘い空気がバスルームに満ちた。



透と出会い過ごした52日間。
これからが、僕たちの始まり。




end.


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