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「紘人。……紘人?」
「ん、ぁ……?」

どうやら意識が飛んでいたらしいが、透の優しい声に呼び覚まされた。
ぼんやりとした目で声のした方を向くと、今日恋人になったばかりの透が微笑みながら僕を見下ろしていた。
部屋はナイトテーブルのスタンドライトだけがついていて、辺りは暗い。もう夜だった。
僕が覚えているのは夕方くらいだったような気がするが、一体どれくらい寝ていたんだろう。

「……透」
「ん。なぁに?」

僕が呼ぶと透の表情が蕩けそうに崩れた。そんなに幸せそうな顔をされるとすごく照れてしまう。

「今何時……」
「……八時」
「そうか……」

シーツに顔を埋める。もう少し寝ていたい気がするけれど、透に揺り起こされた。

「紘人、シャワー浴びてメシ食べよ?」
「んー……んん……」

眠気の狭間で返事をすると透が苦笑する気配がした。
体がだるくて死にそうだ。腰が重いし、尻はヒリヒリとひきつっている。幸せな疼痛だけれど、起き上がる気になれない。
しかし結局は透に起こされ彼に抱えられながらバスルームに押し込められた。
立ち上がれなくてへたりこんでいると、少しして裸の透が浴室に入ってきた。

「……?」
「洗ったげる」

言いながら透が僕を四つんばいにして浴槽の縁に凭れさせた。
浴槽に上半身を預けながらされるがままになっていると、尻の割れ目に透の指が這った。

「……あっ、な、何……!」
「やー、最後中で出しちゃったから綺麗にしないとね?」
「ちょ、いいから、透、いやだ……!」

振り返ると、へらへら笑っている顔が目に入った。そのだらしない表情に呆れ果てた。
透の指が僕のアナルの襞をなぞるように優しく辿る。

「うわーココ真っ赤。腫れちゃったね?でも傷は付いてないから大丈夫だよ」

呑気にそんなことを言っているがそうしたのは透だ。
冷静になった状態でそんなところをじろじろと見られては恥ずかしくてたまらない。

「透……あんまり、そういう……」
「ん?あーごめん。じゃあ力抜いてね?」
「うっ……」

言い終わらないうちに透の指がアナルにつぷりと入り込んできた。
楽に二本飲み込んでしまった僕のそこが淫乱になってしまったように思えて泣きそうになる。
精液を掻き出される時に、すっかり刺激に敏感になった前立腺を指先がかすめて声が止まらなくなった。
必死で抑えていたはずがそれでも漏れてしまう声に、透が溜め息を吐いた。

「あっ、や、め、ぁん……」
「……あーもー……」

淫らな僕に呆れているのかもしれない。透は指を引き抜いて浴室を出て行ってしまった。

「え、あ、透……?」

処理は終わったのか?それとも淫乱な僕に嫌気がさして出て行ってしまったのだろうか。
呆然としながら透が出て行ったドアを見つめていたら、すぐに戻ってきてくれてホッとした。しかしその手にボトルのようなものを持っている。

「透、突然どうしたんだ……?」
「あーごめん紘人。俺我慢できない」
「は?」

透は再びさっきと同じ位置に戻り、そして僕の腰を少し抱え上げた。
ぶちゅ、と音がして何事かと振り返ると透がボトルの中から透明な液体を手のひらにたっぷりと出していた。
さすがにそれが何なのかわからないほど無知ではない。セックス時に使う潤滑ローションだ。

「ちょ、あの、そんなものいつの間に……?」
「あんたが寝てる間にコンビニ行って買ってきた」

なんという周到な。
さっきまではそんなものなかったから、家にあった軟膏薬を丸々一瓶使って繋がり合っていたのだ。
驚いている間に僕のアナルにローションが垂らされる。とろりとして冷たいけれどすぐに肌に馴染み、ぬるついた透の指が僕のそこに入り込んだ。

「っあ!」
「すげ……一気に二本いっちゃった。痛くない?」
「ん……んんっ」

こくこくと頷く。穴を広げられるじんじんとした感覚はあるけれど、ローションのおかげかそれほど痛くない。
三本目も容易に飲み込んでしまって、自分のはしたなさに眩暈がした。
指じゃなくて、透が欲しい。

「透……指、もう、いやだ……きみの、が、その……」
「うん、俺も、もうダメ」


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