52日目の僕と彼


その後、折り返しの連絡はなかった。
そこまでされて落胆とともにさすがに腹が立ってきた。
本当にどういうつもりなのか、もう彼の口から聞くまで気が済まないところまで頭に血が上った。

次の休み――月曜は、透も午後講義がないから、いてもたってもいられなくて行動に移すことにした。
透の通っている大学は何度も聞いているから場所はすでに知っている。
身だしなみを整え、臨む。車を飛ばして大学近くのパーキングに停め、早足でそこに赴いた。

すでに午前の講義は終わったらしく、帰る生徒か昼休みを外で過ごす生徒だかがちらほらと校門に見えた。
躊躇なく中に入り、透の姿を見逃さないよう壁にもたれかかって待つ。何時間でも待つつもりだった。
生徒たちにはじろじろと見られるが構わなかった。それほどまで僕はカッカと熱くなっていたのだ。

そうだ、別に透の方から働きかけられなくとも僕から行動したっていいんだ。
僕が透に会いたいから、会いに行く。自然なことじゃないか。何を遠慮していたのだろう。

「あの……誰か待ってるんですか?」

いつの間に近づいてきたのか、女生徒が三人固まって僕に話しかけてきた。

「ああ」
「あたし達の知ってる人だったら呼びましょうか?」
「……いや、気にしないでください。気遣いありがとう」

そっけなく言うと、女生徒達がキャアと声を上げる。
気がつけば周囲に遠巻きに人垣が出来ていた。
さすがに部外者がこんなに堂々と人待ちをしていたら目立ちすぎただろうか、と心配になった頃、キャアキャアとひときわ賑やかな声が聞こえた。
その方向を気になって見ると、そこには僕の探し人がいた。しかも、両腕と前後に可愛らしい女性達を侍らせて。

僕はその姿に嫉妬で頭に血が上った。
僕を抱いたその腕で、誰にも触れて欲しくなかった。
早足で驚いた顔をしている透のもとへ近づく。彼はひどく戸惑っていた。

「……ど、どうして、ここ……」
「――ついて来い」

つい冷たい言い方になってしまう。
透はしゅんとしたあと苦笑して、女性の腕から抜け出した。


そのあとはもう夢中で、透を責めたり逆に諭されたりして、結局僕達は恋人関係に落ち着くことになった。
それは本当に夢のようで、たしかに起きているのに現実感がない。
でも僕を抱く透は生々しくてやはり夢じゃないのだと思い知らされる。

僕を抱くときの透は、いつもと違う。あの飄々とした感じはすっかりなくなって、快楽を求める獣になる。
まさか組み敷かれる側になるとは思いもしなかったし、男に圧し掛かられることがこんなにも怖くて不安な気持ちになるだなんて知らなかった。
けれど透は僕のことをすごく大事に愛してくれて、下になる恐怖はすぐにどこかに行ってしまう。

何度も何度も貫かれて、最初こそスキンをつけていたがすぐに透の手持ちがなくなって、結局そのままの透を受け入れる羽目になる。
その頃には僕も快感で意識が半分朦朧としていて恥ずかしいことを言ったりやったりしていた。自ら腰を振ったり、突き上げられながら自分のペニスを擦ったり。

あとで思い出しては羞恥で顔から火が出そうになったが、セックスになるともう我を忘れてしまう。
自分がこんな風になるだなんて知らなかった。


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