4


怖い、すごく。これ以上溺れてしまうのが怖い。
好きで好きで仕方ないのに、もっと好きになってしまったらどうなるのだろう。

欲に濡れたその瞳に見つめられると黙らされてしまう。
僕に向けられる容赦のない欲望。
なのに僕は心のどこかで歓喜していた。こんなに格好良い男に激しく求められて嬉しいと思っている。

「あ、い、痛……透……」

ずぶずぶと隙間なく埋め込まれる透のペニス。限界まで広げられて痛いのに、その痛みすら愛おしくて仕方がない。
少し引き抜いたり、大胆に押し込まれたり、それらの動作を時間をかけてされると、もう痛みは麻痺してきた。

どれくらい入ったのかもわからないが、透が挿入の動きを止めた。
透も苦しそうに荒く息を吐いている。獣のようなその姿はすごく色っぽくて男らしくて、彼のほうが年下だということも忘れて手を伸ばして縋ってしまった。

彼はそんな僕を優しく抱きしめてくれた。それだけでもう胸がいっぱいでまた涙が出た。まるで大事に愛されているような錯覚に眩暈がする。
透の止まっていた動きがゆるゆると再開される。

「あっ」

中の少し敏感な箇所に透の固いものが当たって、僕は喉を反らして開いた足を縮こませた。
すると透が低く呻き、それと同時になんだかぬるりとした感触がした。
何が起こったのか事態を把握できなくて透を見上げると、彼は困ったように笑っていた。

「え?あ……透……?」
「はは、ごめん……俺、イっちゃったみたい……」

全部僕の中に吐き出してから大きく息を吐いて、透はペニスを引き抜いた。
そうか、夢中で気付かなかったが透はスキンをつけずに僕と繋がってたのかと気付いて急に恥ずかしくなった。中で感じていたのは何も隔てないまさに透そのものだったのだ。
セックスとしては褒められた行為ではないが、僕は少し嬉しかった。

透が体を離して僕をじっくりと見下ろしてくる。きっとひどい姿をしてるだろう。透が欲しくてたまらなくて、浅ましく求めた果ての醜態。
きっと透も同じことを思ったのかもしれない。彼の整った涼しい顔が歪む。

「……泣かせてごめんね」
「と、透……僕は……」

違う、僕はきみのことが好きで、全部受け入れた。だから気にしなくていい――そう言おうとしたが言葉は出なかった。
透の表情が、ひどく落胆したものだったから。
ああ、そうか。やはり男の僕と寝たことを後悔しているんだな。手馴れている彼にとっては、僕のようなされるがままの相手はさぞつまらなかっただろう。

その後彼は無言で後始末をしてくれた。そんなこと無理にしなくていいと言いたかったが、僕は思った以上に心身ともにダメージを受けていて抜け殻のようになってしまった。

それでも優しい手つきで触れてくれる透に何かを期待していて、寝かせられたベッドの中で彼を待った。
この期に及んでも、何か、話したいと思った。出来ることなら、透を楽しませられるようにするから、もう一回しても構わない。

僕も男だから分かる。どうしようもなく性欲が盛り上がってしまう時があることを。
今日はきっとそれだった。だから僕でよければもう一回だけでも――。

しかし現実は残酷だった。
いくら待っても透は寝室に現れなかったし、うとうとと眠って目が覚めたら彼の姿はもう家になかった。
『帰るね。昨夜はごめん』という書き置き一つ残して。

あんなに熱かった熱がすっと冷えた。約束していたドライブはなしになったのだと理解した。それ以上にこの関係も終わったのだと。
僕は結局、彼に何も言えずに終わったのだと知った。


prev / next

←back


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -