おまけ





「これも、見たことない。あとこれも――」
「うん、うん……わかったけどほとんど全部じゃない?」

俺が苦笑しながら言っても、紘人は聞こえてない様子で真面目な顔でぱらぱらと雑誌を捲った。
雑誌をあげるとはいってたけどこんなに真剣に選別されるとは思わなかった。
古い号を見ていた紘人が、ふとページを捲る手を止めた。

「……これは、きみの友人か?」
「ああこの人?ちょっとの間一緒に仕事したけど、大手雑誌に引き抜かれて専属になったすげー人」

紘人が指したのは、ブラウンに染めた清潔なショート髪の超イケメン。
甘い印象の細面でスタイルが良くて、メンズ誌なのに女子人気がすごかった。
たまに同系列の女性誌で女性モデルの相手役として活躍してたからかもしれない。

今は大手メンズファッション誌で活躍する傍ら、自らスタイリストの勉強をしているらしい。
どういうポーズを取れば服が良く見えるのかっていうのを体現してくれて、それを間近で見られた俺はラッキーだったかもしれない。めちゃくちゃ勉強になったからね。
でもすげー無口な人で、挨拶くらいしかしたことがなくて、俺にとってはちょっと謎な人だった。

「あんま話したことないからよくわかんない人だったけどね」
「そうなのか……」

うわごとのようにぼんやりと呟きながら熱心に紙面を見つめる紘人。俺はちょっと嫉妬した。

「なぁに紘人、他の男ばっか見てー」
「あ、い、いや違う。この人のスーツの着こなしが良いから参考にしようかと……」

たしかに、このメンズ誌は大人のカジュアルをテーマにした雑誌で、中にはフォーマルすぎないスーツの着こなしを紹介しているページもある。
紘人が気にしてるモデル――立花さんは、かつてそのコーナーの華だった。

「つーか俺は海外ブランドのスーツを裾上げなしで着れるあんたのがすごいと思うんですけど……」

驚異の手足の長さ。マジすげえ。
俺の賞賛は耳に入らなかったようで、紘人は熱心に立花さんを見てる。超ジェラシー。


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