14


「つうか俺だってさ、俺が知らない紘人の人間関係にヤキモチ焼きますよ?もっと早く出会ってればーって何度も思ったし。あの……真田さん?だって、紘人の婚約者だってすげー羨ましい。俺の知らない紘人の高校生姿を知ってるんだし」
「それは……」
「ね、そう言われてもどうしようもないでしょ?でもこれからの紘人は俺のなんだし、誰にも渡さないから我慢する」
「ん……」

紘人は結構不器用な人なんだな。そんなとこも可愛いけど。
俺だっていつもカッコ良くスマートにとはいかないけど、そんな情けない俺も紘人に好いてもらえたらいいのに。
まだ関係が始まったばかりなのに容易に手放したくない。

「透……」

ようやく涙が止まったらしい紘人の掠れ声が胸元から聞こえる。
俺は応えるように髪とうなじを撫でた。汗でべっとりしてる。

「ね、紘人。一体いつから俺を待ってたの?」
「そ、それは……」
「ん?」
「……電話しても繋がらなかったから、仕事が終わってから、すぐここに来て……」

紘人が仕事を終えて帰ってくるのはだいたいいつも夜の8時から9時くらい。一旦家に戻ってから来たとしても10時くらいから?
――てことは約4時間!?
びっくりして紘人の体を引き剥がした。

「何してんのマジで!?あ、危ないじゃんこんな夜中に何時間も!いや、それよりメシとか……いやいやそうじゃなくて!」

どうしてよりによってスマホの電源落ちてんだよ俺!?

「最初は居留守を使われてるのかと思って……待ってたんだが」
「今日俺昼から撮影だったの。んで、撮影が長引いて仲間とメシ食いに行って……そのあと一郎さんと飲みに行っててさ。紘人に捨てられそうってクダ巻いてたらこんな時間になっちゃって……うわーごめん!もっと早く帰って来ればよかった!つーかもう家入って!ね!」

慌てて紘人の靴を脱がして引きずるようにリビングに連れて行く。
よく見たらこの人スーツですよ!着替えすらしてきてないよ!

「もー風呂入って!服もベッドも貸すから寝て!仕事で疲れてんのに何してんの!?」
「きょ、今日じゃないといけない気がして……その……すまない」
「いいから、もういいから!あ、何か食う?夕飯食べた?」
「いらない……」
「じゃあせめて何か飲んで!外暑かったでしょ?脱水症状になっちゃうから!」

オカンばりに世話を焼き始めた俺を見て、紘人がくすりと笑った。久々に見る笑顔はほんとに綺麗。
ちょうどスポーツ飲料があったからとりあえず飲ませてシャワーを浴びさせた。
シャワーの途中でぶっ倒れないかドキドキしながら、落ち着かなくて煙草を吸って出てくるのを待った。


prev / next

←back


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -